本研究課題は,非感染性炎症系に着目して妊娠糖尿病妊婦と健常妊婦とを比較検討することで,妊娠糖尿病の病態モニタリングと,将来の2型糖尿病発症に関する予後因子の新規開発を目的として計画したものである. 研究代表者は,過去に胎盤に関する基礎研究を進める過程で,ヒト胎盤絨毛細胞の初代培養を行い,NLRP3インフラマソームの発現を見出して,caspase-1やIL-1βが絨毛細胞中のインフラマソームを介して活性化され,Glibenclamideによって抑制されることを示した. 基礎研究の結果を臨床に展開することとし,妊娠糖尿病罹患妊婦では,正常妊婦に比し,血清中の非感染性炎症反応が亢進し,NLR系を介してNLRP3インフラマソームが有意に強く発現していると仮説を立て,その際に,インスリン抵抗性の増大で示される2型糖尿病と同様にTXNIPがNLRP3インフラマソームの活性化に関連しているかどうか検証することとした. さらに,妊娠終了後,空腹時血糖で示されるより早期にインフラマソームの活性化が示されれば2型糖尿病発症の予知が可能になると仮説を立て,本研究期間において,前向き検討を行うこととして来た. 令和2年度に続き,研究3年目にあたる令和3年度においても,機関において社会的な感染症蔓延に対する予防策が優先され,被験者となる妊娠糖尿病妊婦への研究要請や対照とした健常妊婦への協力要請には困難を生じ,研究遂行は困難と判断した.学術情報の収集にとどめ,本研究を中止することとした.
|