研究課題/領域番号 |
19K09815
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
柴原 浩章 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80206143)
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研究分担者 |
杉山 由希子 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (70847384)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生殖医療 / 男性不妊 / 精子 / セロトニン / 受精 / SMAS / 精子パラメーター |
研究実績の概要 |
哺乳類の精子は、射出直後は受精する能力を持っていない。卵子と受精する前に受精能を獲得する必要がある。受精能を獲得した後に鞭毛運動様式変化(超活性化)や先体反応を誘起することができる。これらは卵管内の物質により制御されている。本研究では卵管内に存在する5HT (5-hydroxytryptamine,セロトニン)が精子受精能獲得にどのような影響を及ぼすかを検討する。5HTは主に神経伝脱物質として、脳機能や腸管運動に関わっている。5HTは受容体を介して作用するが、受容体には約11種類のタイプがあると報告されている。ヒトの生殖系では5HTが精子運動速度に影響を及ぼすことが知られているが、どの5HT受容体が関わっているのかは報告がない。本研究では様々な濃度において精子にどのような影響があるのかを調べる。精子運動に関するパラメーターを数値化してどのように作用するのか検討する。シリアンハムスターの精子における超活性化と先体反応は、共に5HT2受容体と5HT4受容体を介して調節されることが報告されている。ヒトの精子においては、5HT1受容体、5HT2 受容体、および5HT3受容体があり、5HTの添加によっていずれかの受容体を介して精子の運動速度が上昇することが報告されている。既に我々は、マウス精子において、超活性化の促進には5HT2、5HT3、5HT4、5HT7受容体が関わっているという成果を得ている。従って、5HTは超活性化を含む精子の運動性を調節すると考えられるが、その調節機構はこれまで不明である。本研究では、5HTによるヒト精子の超活性化の調節機構につきCASA(computer-aided sperm analysis)を使用して検討し、男性不妊治療の1つとしてセロトニンが有用かどうか検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を実施するに先立ち、学内倫理審査委員会に申請し、承認を得た。(承認番号 倫2997 5HTによるヒト精子の運動性への影響 2018/9/19承認、2021/3/31変更申請承認)。ヒト凍結精子を融解しswim-up法により運動性の高い精子を用い、セロトニン添加をした。経時的に精子を回収しSMAS(精子運動解析装置システム)を用いて、精子運動率、運動速度、頭部振幅、頭部振動数を測定した。実験では5HTを1~100mMの濃度で各パラメーターへの影響および、変化を検討したが、いずれのパラメーターにおいても有意な変化は見られなかった。次に5HT受容体に着目し、蛍光抗体法により精子における局在を調べたところ、3種のレセプターが精子に存在することが明らかになった。5HT受容体のインヒビター添加実験により5HT2A、5HT4、5HT6がヒト精子の運動率を低下させることが明らかになった。5HTの添加により運動率の上昇等の変化は認められなかったが、インヒビターの添加により抑制作用が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を進めるにあたり、研究対象者の選定方針の拡大を含む変更を学内倫理委員会に申請し承認を得た。その内容は、ヒト凍結精子だけでなく新鮮精子を用いて5HTを各濃度で添加してSMASでの各種パラメーターへの影響を検討し、新鮮精子と凍結融解精子で違いがあるか調べる。また、5HTの添加により運動率の改善が見られないことから、すでに5HT受容体が飽和している可能性があるので精漿中の5HT濃度について検討する。ヒト材料を用いる研究にはサンプルごとのばらつきがあるため、精液所見と各種パラメーターの関連について検討する。これをもとに精子の質と5HTの関係を明らかにする。さらに、5HT受容体のインヒビター添加により運動性が傷害された結果をふまえ、5HT受容体に焦点を当ててこれを介するシグナル伝達システムについて解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウィルス感染拡大により、実験試薬・機器等の消耗品が納品されない事態があり、代替品を選択したことで余剰金がでた。 上記のため、未使用額が生じたため、次年度に繰り越し、必要な消耗品や人件費として使用を計画している。
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