研究課題/領域番号 |
19K09817
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
網田 光善 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期・母性診療センター, 医員 (30420061)
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研究分担者 |
斉藤 隆和 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期センター, 医師 (00272071)
石田 恵理 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期センター, その他 (00387078)
巽 国子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 共同研究員 (10534860)
康 宇鎮 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 研究員 (10647978)
宮戸 健二 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 室長 (60324844)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生殖補助医療(ART) / 卵丘細胞卵子複合体(COC) / Dysmature COC |
研究実績の概要 |
本研究では、採卵時のCOCの成熟度がARTの成績に及ぼす影響を検討する。 2014年1月1日~2019年12月31日までにARTを行い、研究の同意を得られた429症例、822周期を対象に、COCの成熟度をMature (M)、Immature (IM)、Dysmature (D) に分類し、その後の臨床成績を解析した。患者年齢は39.5±4.0歳で、総獲得COC数は4819 個、M群2554個、IM群1524個、D群698個であった。各群の差を年齢調整したロジスティック解析を行った。患者年齢はM群が有意に高かった(M群38.2±4.1歳、IM群37.8±4.0歳、D群37.4±4.1歳)。成熟卵(MⅡ卵)の獲得率は、M群で有意に高く(M群92.7%、IM群86.0%、D群70.3%)、MⅡ卵あたりの受精率は、IVFでM群が有意に高く(M群74.6%、IM群66.9%、D群57.0%)ICSIでは、D群で有意に低値となった(M群83.7%、IM群80.9%、D群74.4%)。受精卵数あたりの胚利用率は、IVFで、M群が有意に高く(M群73.5%、IM群63.0%、D群57.3%)、ICSIでは、D群が有意に低値となった(M群68.0%、IM群63.3%、D群49.1%)。 移植当たりの妊娠率は、M群21.0%(167/795)、IM群18.8%(60/320)、D群24.6%(20/81)、妊娠あたりの流産率は、M群39.0%(62/158)、IM群31.0%(18/58)、D群25.0%(5/20)移植当たりの生産率はM群12.0%(96/795)、IM群12.5%(40/320)、D群18.5%(15/81)と、いずれも有意差を認めなかった。 以上よりD群のCOCは、成熟卵の割合が低く、その後の受精率、胚利用率が不良であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、COCの成熟度とその後の、成熟卵獲得率、受精率、着床率、妊娠率についての関連と、Dysmature COCを生じる臨床医的背景について、現在治療中のART患者からの情報を蓄積し解析した。検体数が増えたことにより、受精方法別(IVF、ICSI)ごとの結果を比較することができた。概ね順調に経過しているが、Dysmature COCの数自体は少ないので、さらに症例数並びに獲得COC数を重ねて解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は症例数を追加したことにより、年齢調整をした解析を行うことができた。今後は、BMI、AMH値、調節卵巣刺激の種類、不妊原因、たとえば子宮内膜症の有無などDysmature COCを生じる背景について、さらに多変量解析を行うべく症例蓄積を継続し解析する。 また、本年度は、Dysmature COCと胚の染色体の異数性との関連を調べるため、新たに倫理委員会承認の下、不妊治療を終え凍結胚の廃棄を希望しかつ書面でのICを得られた患者の廃棄卵を用いて、M群由来、D群由来の胚盤胞に対し、次世代シーケンサーを用いたPGT-Aを施行した。各群4例ずつと検体数は少なかったが、D群由来胚盤胞はいずれも正倍数性胚であり、Dysmature COC由来の胚盤胞は染色体異数性との関連を示唆するものでははないことが考えられた。先の臨床データにおいて、移植に用いた胚の比較において、M群、IM群、D群で、妊娠率、流産率、生産率に差はなかったことと整合性のある結果であった。患者から研究用の廃棄卵を数多く獲得することはなかなか容易ではなく、PGT-Aも高価であるため、検査数を増やすことは容易ではないと考えるが、可能なかぎり検査を追加し解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19のpandemicによる移動制限のため、関連学会、学術講演会が海外学会も含めすべてオンラインでおこなわれているため、研究計画当初に見積もりしていた出張旅費が本年度は不要となったため繰越金が生じた。 本年度は、費用の掛かる検査、例えばNGSを用いたPGT-Aなどももう少し取り入れて、研究の幅を広げる予定である。
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