研究課題
【背景】血管新生阻害療法は、卵巣がんにおいて重要な標準治療であるが、薬剤耐性が問題となっている。我々は、卵巣がん患者の免疫不全マウス移植モデルPDXを用いて、血管新生阻害薬ベバシズマブとCCR2阻害薬との併用療法の効果がベバシズマブを上回るかどうかを検証した。【方法】連続して作製した3つのPDX(漿液性がん、明細胞がん、漿液性がんの順)について、それぞれ15、8、8匹のマウスを無作為にベバシズマブ単剤(BEV)、あるいはBEVとCCR2阻害薬BMS CCR2 22の併用療法(BEV/CCR2i)の2群に分けて治療を行なった。【結果】BEV/CCR2iは2つの漿液性がんPDXにおいてBEVと比較して有意な腫瘍増殖抑制効果(第1のBEV耐性PDXで30.4%、第3のBEV感受性PDXで15.5%)を示し、治療中止後も効果が持続した。また、組織透明化法と免疫組織学検討により、マウスからの血管新生と移植腫瘍内の患者由来血管の維持の両方が阻害されていることがわかった。一方、明細胞がんPDXにおいては、当初5回のBEV/CCR2iを行うも効果を示さなかったが、CCR2iを増量して3回の追加治療を行なったところ有意な腫瘍増殖抑制効果(28.3%)を示し、血管新生抑制効果ではなく、腫瘍細胞のCCR2-MAPK経路の直接的阻害効果であることがわかった。【結論】BEV/CCR2iは、抗腫瘍免疫非依存性に、相乗的な血管新生阻害および腫瘍増殖抑制効果を有することを初めて発見した。治療効果は組織型により異なる可能性が示唆され、漿液性がんで最も効果が高いことが示唆された。
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