研究課題
<分娩開始時期決定に関する胎児胎盤母体間情報伝達の動物実験モデルによる検討>Nrk(Nik-related kinase)は、マウス胚体外組織から単離されたX染色体上の遺伝子である。2011年、DendaらはNrk欠損マウスは胎盤が肥大し、高頻度で分娩遅延が起こることを発表した。そこで申請者らは胎仔/胎盤から母体へ向け発出される分娩誘発シグナルが、Nrkと深く関連しているという仮説を立てた。昨年度、我々はNrkノックアウトマウスと正常コントロールマウスの胎盤における発現遺伝子解析を行った。同時に母体へのメッセンジャーとして機能している可能性が高い胎盤由来マイクロRNAの差異の比較検討を進めた。結果、Nrkの影響を受ける分娩誘発シグナルの候補となる数種類の遺伝子を発見した。また電子顕微鏡から、Nrkノックアウトマウスの胎盤中の粗面小胞体では物質の分泌不全が起こっている所見を得た。我々は発現遺伝子比較で得た候補が分泌不全になることで分娩遅延を誘発すると考えている。我々はNrk欠損マウスの妊娠後期の血液中の分娩関連因子を解析することで、Nrk欠損マウスの分娩遅延の原因がプロゲステロン高値によるものであることを発見した。<分娩開始時期決定に関する胎児胎盤母体間情報伝達のヒト臨床検体による検討>ヒトにおいても分娩予定日を超過した過期妊娠は母児の予後が悪いことが知られている。マウスで見られた現象が、ヒトにおいても起きているか否かを、Nrk遺伝子のmRNA、蛋白レベルで確認し、分娩誘発シグナルを検索することを目的としている。我々はこれまでに正常ヒト胎盤のHE染色・免疫染色・in situ hybridizationを行い、Nrkが絨毛合胞体細胞層に発現していることを証明した。今後は早産、正期産、過期産となった患者の胎盤でNrkの発現を比較検討する予定としている。
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巻: 69 ページ: 32-41
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