研究課題/領域番号 |
19K09822
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉原 弘祐 新潟大学, 医歯学系, 研究准教授 (40547535)
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研究分担者 |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (00192500)
榎本 隆之 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90283754)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / ゲノム / 癌関連遺伝子変異 / トランスクリプトーム / オルガノイド / アリル特異的発現 |
研究実績の概要 |
本研究では、正常子宮内膜から子宮内膜症への連続的OMICS データの統合解析と正常オルガノイドを用いた機能解析を組み合わせることで、子宮内膜症発症の原因となるゲノム・エピゲノム異常を同定し、発症メカニズムを解明することを目的とする。 研究2年目は、RNA in-situ hybridization methodを用いて、子宮内膜症におけるKRAS G12Vの生物学的意義の検討を行った。卵巣子宮内膜症26例のFFPE切片に対し、ISH法を用いKRAS p.G12Vの変異アリルの発現を検証した。卵巣子宮内膜症26例のうち、10例でKRAS p.G12Vの陽性シグナルを確認した。変異シグナルは卵巣子宮内膜症病変の上皮細胞のみで陽性であり、間質細胞では野生型シグナルのみを認めた。ISH法を施行した卵巣子宮内膜症のうち、解析可能な12例に対しターゲットシークエンスで変異状態を確認したところ、ISH法で変異シグナルを同定した5例はすべてKRAS p.G12Vを認め、野生型シグナルのみ陽性であった7例のうち5例はKRAS野生型、2例はKRASpG12A、KRAS p.G12Dであり、ISH法から想定される変異状態はシークエンス結果と一致していることを証明した。変異シグナルを同定した卵巣子宮内膜症のうち2例にシグナルの発現に不均一性を認め、変異シグナルのみ陽性の領域を赤、野生型シグナルのみ陽性の領域を緑、変異シグナルと野生型シグナルの両方が陽性の領域を黄色に区分けした。ISHを施行した連続切片でp-ERKの発現を免疫染色で確認したところ、区分けした領域単位でp-ERKの発現強度に違いを認めた。卵巣子宮内膜症において癌のドライバーとして知られるKRAS 点突然変異の変異アリルの発現をRNAレベルで可視化することを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、統合ゲノム解析部分とオルガノイドを利用した機能実験に分かれている。ゲノム解析については、非常に興味深い結果を得ることができ、現在mRNAレベルやタンパク質レベルでの発現状況を確認している。正常子宮内膜オルガノイドについても培養可能な状態になっており、研究計画の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、子宮内膜症症例における正常子宮内膜および内膜症上皮のゲノム・トランスクリプトームデータ取得を進める予定にしている。また正常子宮内膜オルガノイドの長期安定培養の確立を目指し、サンプルを追加していく。
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