研究課題
マクロファージはM1,M2マクロファージに分類され、M1(classical type)ないしM2(alternative type)への偏位と各種疾患との関係が知られている。我々は子宮内膜症患者のおよびマウス子宮内膜症モデルを用いた腹腔内マクロファージの解析により、子宮内膜症ではM2マクロファージが優位であること、またM2マクロファージが子宮内膜症病巣の進展に寄与していることを明らかにしてきている。そして、M2マクロファージに偏位させる物質の同定を行うことが、子宮内膜症の新たな治療戦略に繋がるであろう、という仮説を持っている。このことから、ヒト腹腔内マクロファージを分離、培養し、M2マクロファージに偏位させる因子について検討をおこなっている。今回の検討で、インターロイキン(IL)-33が子宮内膜症病巣で高発現していること、またIL-33はマクロファージに作用し、M2マクロファージに偏位させることを明らかにし、論文に発表した。これまで諸家による報告で子宮内膜症は月経を有する動物にのみ発症し、腹腔内に月経血が逆流することが、その病因に深く関わることが知られている。しかし、逆流血が子宮内膜症を発症するメカニズムについては不明な点が多い。逆流する子宮内膜自体の量が増加することが、子宮内膜症になるという仮説はこれまでなされていたが、我々は赤血球由来因子がヒト腹腔内M2マクロファージを誘導することを明らかにした。すなわち、腹腔内に逆流した血液そのものがマクロファージをM2型に偏位させ、そのことが子宮内膜症の進展に寄与していることが示唆された。
3: やや遅れている
職場の変更に伴い、研究室の立ち上げを行った。このため、当初の予定よりも研究の進捗が遅れております。また、2020年4月現在、コロナ感染症により研究室は一時閉鎖となっており、動物実験も停止している。また、手術が延期になったケースが多いことから手術検体は入手が困難な状況は続いている。
これまでの検討で、M2マクロファージが着床(生理的現象)および子宮内膜症(病理的現象)に関わることを明らかにしている。M1,M2型マクロファージは可塑性を有していることから、M1,M2型へのバランス調整を取ることができる因子を見出す。
研究施設の変更に伴い、研究室の立ち上げのために一時研究は停止した。このため、実際の研究スタートが2019年の後半からであったため、次年度に研究費を繰り越させていただいた。2020年4月より大学院生が加わったことで、マンパワーの増大を見込んでいる。それに伴い、研究費の大幅な増大が予想されている。使用計画としては、マウス子宮内膜症モデルの構築および遺伝子改変マウスを用いた研究を予定している。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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