研究実績の概要 |
生殖に関わる生理的および病理的現象にマクロファージ(Mφ)が深く関与することが知られている。しかし、MφをM1,M2Mφというサブタイプレベルでin vivoで詳細に検証した研究は殆どない。その理由として、マウス生体内において、Mφ全体を薬物や抗体で除去することは可能であったが、サブタイプレベルでMφを除去するマウス実験が不可能であったことが挙げられる。我々は、ジフテリアトキシン(DT)を投与することで生体内のM2Mφを除去できる CD206DTRマウス実験系を用い、1.胚の着床にはM2Mφが必須であることを明らかにした。そのメカニズムとして、M2MφはWNT/beta カテニンシグナル系を減少させることで、向炎症状態になることを制御し、着床に寄与することを明らかにした。そして2.生殖に関わる病理的現象の1つである子宮内膜症では、M2Mφが血管新生を制御することで病態増悪につながることを明らかにした。マウスで得られた知見を臨床検体を用いて評価を行った。マウスの結果と同様に、1,不妊女性でM1>M2Mφバランスに偏在している症例は子宮内膜でのTNFα発現が強い、いわゆる向炎症状態となり着床不全を呈すること、また2.子宮内膜症ではM2Mφが病巣に多く存在することを明らかにし、特にIL-33や脂質S1Pなどの因子がヒト腹腔内のMφをM2側に偏移させることを明らかにした。加えて、IL-33や脂質S1Pの子宮内膜症における局在や産生メカニズムに関しても明らかにすることができた。
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