研究課題
妊娠後半期に生じるインスリン抵抗性は、胎児発育の視点からみると合目的的である。一方、このインスリン抵抗性の発生機序に関しては、依然未解明な点が多い。その理由は、これまでの検討方法が臓器横断的な検討であったため、生体全体の反応としての把握がなされていなかった可能性があるからである。本研究の目的は、臓器間ネットワークの視点より生体をよりグローバルに捉え、妊娠中における脳、自律神経(迷走神経、交感神経)、脂肪組織、肝臓、胎盤間のネットワークについて検討し、妊娠中に生じる生理的なインスリン抵抗性の発生機序を解明すると共に肥満等の過剰インスリン抵抗性が生じた際の治療戦略を立てることである。初年度は、申請者らがこれまで使用している妊娠モデルマウスを用いて妊娠中の生理的代謝変化に関し、以下の研究成果を得た。① 脂肪組織における代謝変化:妊娠後期において、妊娠群は非妊娠群に比し、摂食等により脂肪細胞における熱産生低下傾向が認められ、熱量消費低下に作用する可能性が示された。②肝臓における糖新生系の変化:妊娠群では非妊娠群に比し、肝臓における糖新生は低下傾向を呈した。現在、糖新生の影響を神経活動反応測定等により検討している。以上の①および②の結果に加え、脂肪組織における遺伝子発現の網羅的変化を検討中である。これら変化する遺伝子群の中で脂肪組織や肝臓においてインスリン抵抗性と関連する遺伝子群をさらに検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、申請者らがこれまで使用している妊娠モデルマウスを用いて妊娠中の生理的代謝変化に関し、① 脂肪組織における代謝変化、② 肝臓における糖新生系の変化、③ 糖質・脂質・蛋白質の胎盤を介した胎児への栄養素供給の変化、について検討する予定であった。そのうち①、②について結果を得たとともに、①、②のメカニズムに関する検討を行っている。具体的には、モデルマウスとコントロール群の脂肪組織や肝臓における網羅的遺伝子発現に関する検討を行っている。一方、③についても検討を開始する予定があり、概ね順調であると考えられる次第である。
「研究実績の概要」で示したとおり、初年度の研究内容は、妊娠中の生理的代謝変化に関する検討を行った。その内容として、① 脂肪組織における代謝変化、② 肝臓における糖新生系の変化、のさらなる検討と、③ 糖質・脂質・蛋白質の胎盤を介した胎児への栄養素供給の変化)、である。その結果、①妊娠群は非妊娠群に比し、摂食等により脂肪細胞における熱産生が低下傾向を呈し、熱量消費低下に作用する可能性が示された。今後、妊娠中の交感神経活動反応を測定し、脂肪細胞の異化の状態を含め、インスリン抵抗性との関連を検討する。②については、糖新生がやや亢進することがわかり、交感神経・副交感神経系との関連を検討する予定である。また、脂肪組織と肝臓における遺伝子の網羅的検討を行っており、今後さらに変化する遺伝子群の検討やメチル化に関する検討仔行う予定である。③今後、検討を加え、次年度に結果をまとめる予定である。最終年度は、肥満を含む過栄養状態の母体に対する治療的戦略を立てるため、高脂肪食妊娠モデルマウスを用いて、妊娠中の食餌介入実験を行う予定である。
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