研究課題/領域番号 |
19K09826
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
本原 剛志 熊本大学, 病院, 講師 (10457591)
|
研究分担者 |
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70304996)
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90224451)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 卵巣癌 / マクロファージ / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本邦において卵巣癌は、罹患数および死亡数ともに増加傾向を示しており、現在では女性性器悪性腫瘍の中で最も死亡者数の多い予後不良の疾患である。本疾患に対する早期発見のための有効なスクリーニング法は現在まで確立されておらず、また発症初期の段階では特異的な自覚症状に乏しいことから、多くの症例ではすでに腹腔内に多発性の播種病巣を形成した進行癌で診断されることになる。 近年、様々な悪性腫瘍の進展や治療抵抗性において、腫瘍細胞を取り巻く腫瘍微小環境の関与が極めて重要な役割を果たしていることが注目されている。われわれが過去に行った解析結果からは、それぞれの腫瘍組織中に存在する腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)が、卵巣癌の腹腔内の播種病巣における腫瘍微小環境の形成に密接に関わっていることが見出された。しかしながら、卵巣癌の治療の過程において最も深刻な問題である抗癌剤治療抵抗性に関する腫瘍随伴マクロファージの役割については、未だ十分には解明されていない。 今回の研究においてわれわれは、当教室で行ったこれまでの研究で明らかにされた卵巣癌細胞と腫瘍随伴マクロファージとの関連性についての研究成果をさらに進展させることで、腫瘍微小環境の形成に関わる腫瘍随伴マクロファージの役割について、特に卵巣癌細胞との細胞間相互作用ならびに抗癌剤治療抵抗性に関与する分子メカニズムの解明を目指す。さらに、それらの相互作用に関わる決定的な分子を同定し治療標的とすることで、腫瘍随伴マクロファージの生物学的動態の制御による卵巣癌に対する革新的な新規治療戦略の開発を目指す。卵巣癌の抗癌剤治療抵抗性に関して、腫瘍微小環境における腫瘍随伴マクロファージの機能的役割に着目した研究は、世界的にもほとんど報告されておらず、今後のさらなる詳細な解析が必要な研究領域である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回われわれは、卵巣癌の腫瘍組織内における癌細胞と腫瘍随伴マクロファージとの細胞間相互作用、そしてそれら腫瘍随伴マクロファージの機能を制御するCSF-1RならびにそのリガンドであるCSF-1の分子生物学的な役割を明らかにするために、臨床検体を用いた臨床病理学的な検討に加え、in vitroならびにin vivoでの実験による網羅的な研究を計画している。すでにわれわれは、in vitroでの解析において、卵巣癌細胞とマクロファージとの共培養の実験を行い、それぞれの細胞間におけるCSF-1ならびにCSF-1Rの関与を明らかにした。今後は,それらのシグナルと抗癌剤抵抗性との関連性についての実験をすすめていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在行っているin vitroの解析において、腫瘍随伴マクロファージと卵巣癌細胞との細胞間相互作用を明らかにした後に、マウスモデルを用いたin vivoでの実験を予定している。卵巣癌の腹腔内播種病巣に対するCSF-1RならびにCSF-1阻害剤の抗腫瘍効果ならびに抗癌剤感受性に与える影響について解析を行い、特に、それぞれの阻害剤が、腫瘍随伴マクロファージの腫瘍組織への集積やM2マクロファージへの分化にどのような影響を与えるかについて、播種病巣におけるマクロファージの生物学的動態を詳細に観察することでその有効性について詳細な検証を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延による国際郵便等の遅延により、購入希望の試薬の入荷の見通しが立たなかったため
|