研究実績の概要 |
尾部退行症候群 (caudal regression syndrome, CRS)は、胎生3, 4 週における正中部尾側原基の形成不全によって起こる直腸、尿路、性器、腰仙椎、下肢の奇形症候群で、発生頻度は 100,000出生あたり1から2.5とされ、糖尿病合併妊娠に疾患特異的な稀少疾患である。我々は先行研究「PTF1A遺伝子の発現制御領域の変異/修飾を原因とする骨系統疾患の同定」と題した研究(平成26年7月18日付熊本大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会承認)により、妊娠初期に母体の高血糖に曝された児では、尾部退行症候群 (caudal regression syndrome, CRS)を含めた合併奇形の有無に関係なく、Ptf1aホモログ遺伝子の発現制御領域のエンハンサー領域と近傍にあるCpG領域のメチル化率が有意に上昇していることを明らかにした(仙波ら. 2016)。今回の研究は、熊本地震のため中断していた上記研究のうち臨床研究の部分を再開したものである。 妊娠初期にHbA1cが評価され、当施設で出生に至り母児の転帰を調査し得た単胎妊娠症例について、1型糖尿病13例、2型糖尿病8例、妊娠糖尿病13例、対照(妊娠初期にHbA1cが正常で、妊娠中の糖負荷試験でも正常値であった症例)7例について書面による同意を得て臍帯血と絨毛組織を採取しDNA, RNAの抽出を行った。新生児については当施設の新生児科で精査を行い尾部退行症候群(CRS)あるいは外性器異常を呈した児はなかった。新型コロナ禍の影響で解析の開始に遅延が生じていたが、現在エピゲノム変異の解析を進めている。
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