研究課題/領域番号 |
19K09830
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
菊池 昭彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10280942)
|
研究分担者 |
金杉 知宣 岩手医科大学, 医学部, 非常勤医師 (40453302)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 母体腹壁誘導胎児心電図 / 胎児心拍数基線細変動 / 胎児発育不全(FGR) / カオス時系列解析 / アトラクタ再構成 / 最大リアプノフ指数 / 相関次元 / サロゲート データ法 |
研究実績の概要 |
妊娠18週以降の同意が得られた妊婦に対して母体腹壁誘導胎児心電図(アイリスモニタ、アトムメディカル株式会社)と超音波ドプラ法による胎児心拍数記録を同時に40分間行った。2019~2020年度の研究では、正常単胎胎児(コントロール;C群)と発育不全胎児(FGR群)の2群それぞれに対して検査施行症例はC群53例、FGR群23例の計76症例にとどまっていた。本年度2021年度には検査施行症例の蓄積が大幅に進み、2019~2020年度と合わせた症例数はC群84例、FGR群29例の計113症例に達した。 2020年度が終了した時点での検査症例で、raw dataにおける胎児心電図検出率について(A;記録時間の70%以上で検出可能、B;記録時間の30-70%で検出可能、C;記録時間の30%以下のみ検出可能)として検討したところ、C群では(A; 9例、B; 11例、C; 30例)であり、FGR群では(A; 10例、B; 4例、C; 9例)であった。カオス時系列解析においては時間発展に伴う変化を追うことが重要であり、かつ、正確な解析を行うためには継続したなるべく長時間の検査データを要する。raw dataにおける上記の胎児心電図検出率のままでは、raw dataそのものを解析しても良質なカオス時系列解析が行えないことが判明した。そのため、記録された胎児心電図波形の実記録から、明らかなアーチファクト部分のデータ補完による編集後に得られた心拍数変動データを用いて、カオス時系列解析を行うことが必要であると結論されていた。 そこで2021年10月12日までに検査した90例について胎児心電図波形実記録データの検討を行ったところ、アーチファクト部分のデータ補完による編集でカオス時系列解析が可能となる20分以上連続データが90例中の32例、10分以上連続データが90例中の43例となることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度が終了した時点で検査症例数はC群84例、FGR群29例の計113症例となっている。C群の症例蓄積は比較的順調に進んでいるが、FGR群は当然ながらC群に比べて患者数が少ないため、FGR群の症例蓄積数が遅れていることが理由の1つである。 また、「研究実績の概要」で述べたように、2021年10月12日までに検査した90例について胎児心電図波形実記録データの検討を行ったところ、アーチファクト部分のデータ補完による編集でカオス時系列解析が可能となる20分以上連続データが90例中の32例、10分以上連続データが90例中の43例となることがわかった。2020年度が終了した時点での検査症例における検討から、raw dataにおける胎児心電図検出率が十分に高いとは言えないことは判明していたが、今回の検討からアーチファクト部分のデータ補完による編集でカオス時系列解析が可能となるような、一定時間持続する連続データが得られる症例数が限られることが実際に明らかになったことも理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
当院倫理委員会申請内容により、症例エントリーは2022年9月30日までとなっているため、まずはそれまでにさらなる症例数の蓄積、特にFGR群の症例数を増やすことが最優先事項である。 2022年10月1日以降に、すべての検査症例の胎児心電図波形実記録データに対してアーチファクト部分のデータ補完による編集作業を行った後、当研究室が有している解析プログラムソフトにより、母体腹壁誘導胎児心電図データと超音波ドプラ法データの双方それぞれに対して、①胎児心拍数変動のアトラクタ再構成、②最大リアプノフ指数計算とサロゲートデータ法による検定、③相関次元計算、を行い、まずは双方の結果を比較し、以前の研究で行った後者による解析結果の正確性・妥当性の検証を行う。その後に、母体腹壁誘導胎児心電図データを用いて妊娠週数の進行に伴う心拍数変動ダイナミクスの経時的変化を正常・異常胎児において定量化する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度も新型コロナウイルス感染症パンデミックのために、本研究に関連する多くの学会や研究会の開催が中止になったことにより、学会・研究会参加費と出張費の使用が大幅に減少し次年度使用額が生じた。 検査症例の蓄積は進んでいるが、raw data編集作業と編集後データによるカオス時系列解析を全症例に対して行う必要があるため、次年度使用額を使ってデータ保存・解析・統計学的検討を行っていく。また、新型コロナウイルス感染症パンデミックが落ち着いてくれば、学会・研究会の開催も増えてくることが予想され、参加費や出張費への支出として使用予定である。
|