研究課題
卵巣癌のなかでもHigh-grade serous carcinoma(以下HGSC)の一部は、卵管や卵管采の上皮細胞がSerous Tubal Intraepithelial Carcinoma(以下STIC)を形成し、STICが卵巣本体へと移行して増殖進展する機序が明らかとなっている。STICの前段階は現時点でも不明であるが、卵巣癌早期発見にはSTICの前段階での変化を検出することが有用と考える。その可能性として正常卵管上皮細胞にp53蛋白が高発現する現象のp53 signatureが考えられるが、これまでの本研究においてp53 signatureは卵巣嚢腫や子宮筋腫例など卵巣癌とは関連性が低い症例にも出現することが明らかとなっている。そこで本年度はp53 signatureの特性をさらに解析するため蛋白発現を中心に探索を行った。良性疾患とリスク低減両側卵巣卵管摘出術(以下;RRSO)のp53 sigantureの細胞結合能を比較するため、Eカドヘリンの発現を検討した。その結果、RRSO例のp53 signatureにおける局在はp53蛋白発現陰性の卵管上皮と比較して分布が不規則であった。次にEカドヘリンのリガンドであるCD103の局在をp53 signatureとCD103の二重免疫組織化学染色を行い陽性細胞数を画像解析ソフトでカウントして測定した。その結果、RRSO例のp53 signatureではCD103の数が減少していた。これらの解析よりRRSO例のp53 signatureには細胞結合能の低下が示唆された。近年の報告でHGSCは必ずしもSTICを経るのではなく、悪性腫瘍の細胞形態学的特徴を欠いているが、TP53変異を含む細胞が卵管内で初期前癌性漿液性増殖と形質転換引き起こし悪性化する機序も提唱されていることからRRSO例のp53 signatureの特性のさらなる検討が要されると考察された。
すべて 2021
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International cancer conference journal
巻: 10 ページ: 6-10
10.1007/s13691-020-00449-9