研究課題
本研究では、婦人科癌の組織やliquid biopsy中に存在する癌細胞、少数しか存在しない癌幹細胞、癌幹細胞の維持や分化の調整を行うとされる微小環境の構成細胞を研究対象としている。精度の高い一細胞解析技術を用いた癌幹細胞ニッチの分子生物学的な解明を行うことで病態を評価し「一細胞の解像度で細胞内外の情報を収集する」ことを目指している。抗癌剤や放射線に対する強い抵抗性や、癌の転移に対しても重要な役割を果たしていると考えられている癌幹細胞ニッチを一細胞の解像度で病態解明することで、新規治療法の開発への応用ができる可能性がある。2019年度は、婦人科癌、特に卵巣癌を中心に癌幹細胞ニッチモデルの作成を試みた。研究同意の得られた患者より採取した細胞および各種細胞株を無血清、浮遊培養させ、Spheroid 形成を誘導し、CSC様細胞の樹立に成功した。CSC様細胞は安定して継代できる細胞であり、in vitroの実験を行う上でも再現性が保てている。本年度では、培養細胞および臨床検体から樹立したCSC細胞の特性を、FACSで表面マーカーを測定することで評価を行った。また癌幹細胞ニッチモデルとしてCSCと血管内皮細胞の共培養モデルを作成し、血管新生誘導能の高いCSC細胞と低い細胞を表面マーカーをプロファイリングすることで鑑別し、評価することができた。血管新生誘導能が高いCSC細胞の共培養下での経時的変化についてlive cell imagingで評価し、また遺伝子網羅的解析でも評価することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
2019年度の計画目標である婦人科癌由来の癌幹細胞ニッチモデルの作成に成功し、CSCと微笑緩急構成細胞である血管内皮細胞との相互関係に関与するプロファイリング変化を検証することができた。当初の目標であるCSCおよび微小環境構成細胞間の変化過程について、遺伝子発現レベルで網羅的解析を行うこともできている。
上記の検討で解析された細胞プロファイリングの情報に基づき、CSCと微小環境を構成する細胞、特に血管内皮細胞とのシグナル経路を解析を進めていく。今後はマクロファージやリンパ球といったその他の構成細胞との相互作用についても研究を進めていく予定である。我々の最終目標は、臨床検体を用いてCSC周囲の微小環境構成細胞をそれぞれ分離し、Electroactive Micro well Array(EMA)デバイスを用いて単一細胞ごとに区画化することで、CSC一細胞ごとの遺伝子解析を行うことを目指すことである。そのため、今後もマイクロ流体デバイスに対する技術支援を頂きながら、本研究を推進していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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