研究課題/領域番号 |
19K09834
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
長阪 一憲 帝京大学, 医学部, 教授 (30624233)
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研究分担者 |
Kim SooHyeon 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (80709189)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一細胞解析 / マイクロ流体デバイス / 3次元培養 |
研究実績の概要 |
本研究は、精度の高い一細胞解析技術を開発し、子宮頸癌組織中、および卵巣癌の腹水中の細胞集団の中で、少数しか存在しない癌幹細胞や、幹細胞の維持や分化の調整を行うとされる血管内皮細胞といった不均一な細胞集団で構成される微小環境(幹細胞ニッチ)の制御機構の解明を「一細胞の解像度で情報を収集する」ことを目指している。今年度は、子宮頸癌細胞に対しては、マイクロ流体デバイスにより単一細胞で不均一性な細胞集団のプロファイリングを数値化することを目指し、また腹水中の卵巣癌細胞株に対しては、細胞集団からのがん幹細胞(CSC)様細胞の分離を試み、3次元培養によるCSC血管ニッチモデルの作成を行った。成果は2020年4月に日本産科婦人科学術集会で発表をし、JSOG Congress Encouragement Awardを受賞した。一方、子宮頸癌細胞は、細胞株であると単一細胞化が容易であるが、臨床検体では単一化をすることが非常に困難であったが、我々の検討により単一細胞化をすることができた。デバイス内で免疫染色を行う技術により、複数のバイオマーカーによる臨床検体の評価が可能となっている。また卵巣癌患者から採取した腹水から分離したCSC様細胞を用いて、プロファイリングの検討を行うことに成功した。今後はさらに症例を増やし、臨床的意義について検討を進めていき、抗癌剤や放射線に対する強い抵抗性や、癌の転移に対しても重要な役割を果たしているとされる幹細胞ニッチを同時に一細胞解析で解明することを目指していく。さらには抗がん剤の治療効果を評価できる新規バイオマーカーの創出に向けた基盤となる研究を計画していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による研究時間の縮小化が起きてしまった。そのため実験手技の確立はできたが、その先の臨床的意義の評価まで十分な臨床検体の集積が十分に進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展が遅れているが、継続して臨床検体を集積し、実験を進めていく。子宮および卵巣などの婦人科癌の細胞診検体を用いて、腫瘍内不均一性をCSC、幹細胞ニッチ、腫瘍周囲の微小環境それぞれの病態生理学的なメカニズムを制御し得る因子を新しく同定することで、治療評価の可能なバイオマーカー、新規分子標的阻害剤の開発を目指した基礎的検討を行う。今後は臨床応用が可能な研究へと進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であり、実験計画進展に支障が出た。実験手技は確立できたが、臨床検体収集に時間を要している。
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