研究課題
抗癌剤や放射線に対する強い抵抗性や、癌の転移に対しても重要な役割を果たしているとされる幹細胞ニッチを同時に一細胞解析で解明することで、新規治療法の開発への応用ができると考えている。進行卵巣癌の腹水中の細胞集団の中で、少数しか存在しない癌幹細胞や、幹細胞の維持や分化の調整を行うとされる血管内皮細胞といった不均一な細胞集団で構成される微小環境(幹細胞ニッチ)の制御機構の解明を「一細胞の解像度で情報を収集する」ことを目指している。卵巣癌の腹水細胞診のin vitro、ex vivoモデルを作成し、次に実際の臨床検体を用いた、不均一な細胞集団、特に幹細胞ニッチ、微小環境を構成する細胞に対する精度の高い一細胞解析を実現することを試みた。進行卵巣癌患者腹水より回収した浮遊細胞より3次元培養モデルとなる卵巣スフェロイド細胞を作成することに成功はしており(Miyagawa Y, J Vis Exp 2020)、今回の研究計画中に卵巣スフェロイド細胞および血管内皮細胞との共培養モデルを作成している。それぞれの細胞の遺伝子発現の変化をマイクロアレイで検討し、同定した遺伝子の意義について検討をした。その結果、血管新生と糖代謝に関連する系路が重要であることを明らかにできている(未発表)。現在、更なる解析を進めており、同定したシグナル経路に対する幹細胞独特のepigenomicな影響などないか研究を進めている。
3: やや遅れている
着実に研究は進んでいるが、学内のコロナ禍の影響および対策強化により研究は順調に進められていない。今年度は研究体制を再考し、がん幹細胞と微小環境のモデルを作成し、さまざまな条件下で検討を進めている。
今年度は進行卵巣癌における腹水中に存在するであろう幹細胞ニッチ、腫瘍周囲微小環境に対する詳細な機能解析を行うことで、既存の腹水細胞診より精度が高く、治療評価や予後予測が可能となる新規バイオマーカーを同定することを目指す。
コロナ禍による学内の状況があり、予定した研究を進めることができなかった。今年度は体制を一新し、本研究の進めることができる状況である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Lett.
巻: 521 ページ: 29-38
10.1016/j.canlet.2021.08.018.