研究課題/領域番号 |
19K09835
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
久保田 海雄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (70806174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイポキシア / 胎盤 / 脱落膜 / 妊娠高血圧腎症 |
研究実績の概要 |
妊婦の約5%が発症し母児共に致死性を示す妊娠高血圧腎症は、発症機序が不明なため分娩以外の根本的な治療法が存在しない。胎盤の栄養膜細胞に対する低酸素(ハイポキシア)が引き起こす細胞浸潤不全や炎症因子産生が発症要因の一部である一方、栄養膜細胞と共に胎盤を構成し相互作用する脱落膜細胞とハイポキシアの関連は不明である。本研究は脱落膜細胞に対するハイポキシアの影響を解析することで、妊娠高血圧腎症の発症機序解明へ貢献することを目的とする。 本年度は生体外培養系を用いてRNA干渉を行った。ハイポキシアシグナルはαとβのヘテロ二量体から成る転写因子複合体、ハイポキシア誘導因子(HIF;HIF1α、2α、3αおよび 1β) により伝達されるが、これらすべての因子に対して2種類ずつ異なる配列のノックダウンを確立した。胎子由来の栄養膜細胞においてはハイポキシアが分化(合胞化)を抑制しているが、この時HIF2AおよびHIF1Bがそのシグナルを仲介していた。子宮内膜間質細胞においては、通常酸素濃度ではHIF2Aのノックダウンにより分化(脱落膜化)が促進された一方、ハイポキシア条件下においてはHIF3Aがハイポキシアによる脱落膜化の抑制を制御していることが示唆され、現在さらに確認を行っている。妊娠初期胎盤(栄養膜および脱落膜)においてはHIF1A、HIF2A、HIF1Bの発現を確認した。 研究計画では、さらに網羅的発現解析を行い子宮内膜脱落膜細胞におけるHIF標的因子を特定する予定であったが、コロナの影響等により遅れている。次年度に引き続き行うと共に、妊娠高血圧腎症胎盤検体を用いて、生体内における標的因子の評価を行う予定である。得られた知見は治療法や診断マーカー確立のための標的因子特定に繋がり、不妊等の他疾患の理解へも波及すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス対応による制限のため、研究打ち合わせ・研究実施を中断する必要があり、また研究試料の入手・移動・解析も困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーによる網羅的転写産物解析(RNA-seq)を行い、子宮内膜脱落膜細胞においてハイポキシアにより誘導されるHIF標的因子を特定する。その後、それら因子に関して妊娠高血圧腎症胎盤検体における評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が遅れたことまた外注する解析が予定より高価であり、次年度分と合わせて使用する。
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