研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に問題となったミクログリアへの低遺伝子導入効率を改善するため、AAVセロタイプの検討を行った。AAV-CAG-GFPをLE-Tg(OTTC1005) CX3CR1-Cre-ERT2ラット(ミクログリア/Mφ系細胞でタモキシフェン誘導によりCreリコンビナーゼが活性化する組換え遺伝子をラット)の線状体にAAV-CAG-GFPを投与したサンプルを用いて、ミクログリアのマーカータンパク質であるIba1に対する抗体で免疫染色を行い、ミクログリアにおけるGPFの発現を検討した。その結果、検討を行ったすべてのAAVセロタイプ(AAV-1, AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-6.2, AAV-7, AAV-8)において、Iba-1陽性細胞でGFPの発現は観察されなかった。また、ミクログリアへの遺伝子導入が報告(Rosario et al, Mol Ther Methods Clin Dev. 2016, 3, 16026.)されているAAVTM6- Iba1-mCherry-DIO-DTAをAAV-CAG-GFPについても検討を行ったが、mCherryの発現はミクログリアでは観察されなかった。 原因として、ミクログリアに組換え遺伝子が導入されていない可能性、組換え遺伝子は導入されているがコピー数が少なく発現が弱い可能性などが考えられる。本年度に入りOkadaら(Commun Biol, 2022, 5, 1224)がAAV9を用いて、Linら(Nat Methods, 2022, 19, 976-985)がAAV.MG1.1, MG1.2セロタイプを用いて、マウスのミクログリアへの高率の遺伝子導入を報告した。来年度は、これらAAVセロタイプによるミクログリアへの遺伝子導入をラットで検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Okadaら(2022, Commun Biol 5, 1224)やLinら(2022, Nat Methods 19, 976-985)がマウスのミクログリアへの高率の遺伝子導入を報告したセロタイプであるAAV9とAAV.MG1.1, MG1.2を用いて、ラットへミクログリアへの遺伝子導入を検討する。また、遺伝子発現を上げるためプロモーターをIba1プロモーターからSFFVに替えた、AAV-SFFV-mCherry-DIO-DTA投与による検討を行う予定である。ミクログリアへの遺伝子導入の条件が決定次第、速やかにミクログリアを特異的に除去する実験を、続いてDREADDによるミクログリア活性化を抑制する実験の検討を行う予定である。
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