研究課題/領域番号 |
19K09838
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
田中 智人 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90411363)
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研究分担者 |
林 正美 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (00551748)
大道 正英 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10283764)
田中 良道 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10625502)
恒遠 啓示 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70388255)
佐々木 浩 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80432491)
古形 祐平 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80829953)
寺井 義人 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90278531)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / 腫瘍直接移植モデル / Te-EVs / PDX |
研究実績の概要 |
正常組織と腫瘍組織から放出されたTissue-exudative extracellular vesicles (Te-EVs)を比較するため、卵巣明細胞癌を対象に解析を進めた。卵巣明細胞癌は多くの女性が罹患している子宮内膜症を背景にもち、早期発見のバイオマーカーが期待される疾患で、比較的早期で発見されることもあり正常卵巣が採取できる場合がある。同一患者から健常卵巣と卵巣癌が採取できることは稀で、本研究の対象とした。卵巣明細胞癌4例の正常卵巣および卵巣癌からTe-EVsを採取しNanoparticle tracking analysisおよび電子顕微鏡でEVsの抽出を確認した。これらのTe-EVs内に含まれるmiRNAについてマイクロアレイ解析を行い、4症例全てにおいて正常卵巣組織と比較し明細胞癌組織で高発現を認めたmiRNAを49種類を同定した。同定した49種類のmiRNAのうちmiR-30a-5pについて、患者血清を用いreal-time PCR比較したところ手術前と比較し手術後で低下を認めた。 現在、希少癌を含めてあらゆる腫瘍のpatient-derived xenograft (PDX)樹立に成功している。生着率は子宮頸癌で50%、子宮体癌で51.8%、卵巣癌で44.1%であった。原発巣とPDXの腫瘍特性を子宮頸癌で比較し、HE染色では同様の組織像を示し、免疫染色でも子宮頸癌に特有のP16は強陽性を継体していた。次世代シーケンサーによるDNA変異解析では、原発巣とPDXの遺伝子変異は類似しており、腫瘍特性を継体しているものと思われる。一方でPTENやRASなど、PDXのみでsynonymousを認めるものがあった。RNAseqによる発現解析でも、原発巣とPDXにはかなりの類似性があり、PDXは原発巣の性質を忠実に反映していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PDXの樹立には成功し、モデルマウスをいつでも使用できる状態にある。また、PDXの特性も検討済で、原発巣の特徴を反映していることがわかったため、PDXに関しては実験計画通りの結果が得られている。 一方で、Te-EVsに関しては、その抽出に成功しており、順次解析できる状態にある。現在一部の卵巣癌のみ解析が終わっており、上記の結果をえているものの、解析中の検体が多数存在するため、順次解析を行っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
mRNA・miRNAは選択的にEVs内に取り込まれ、放出されたEVsは元の細胞のRNA情報を他の細胞に伝達できることがわかってきた。そこで、EVsの免疫細胞に及ぼす影響について注目し、「癌細胞は自ら放出したEVsにより免疫寛容を受けている」という仮説をたて、Te-EVsの免疫細胞へ及ぼす影響も解析の対象に含める予定である。EVsはCD9やCD63などの表現マーカーを有しているため、解析が進めば、これらをターゲットにした抗体や阻害薬により、癌細胞の免疫寛容を解除でき、免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強できる可能性がある。
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