研究課題/領域番号 |
19K09842
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
遠藤 一平 金沢大学, 附属病院, 助教 (30547154)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 癌代謝 / 頭頸部癌 / ヘキソキナーゼ / 化学療法 |
研究実績の概要 |
癌遺伝子の変異は多様で複雑であるが、癌特異的な代謝の経路は解糖系の亢進など一定である。癌細胞では代謝系が変化してグルコース代謝を亢進(解糖系)亢進して増殖や転移に必要なATPを産生する(Warburg効果)が知られている。癌は代謝をリプログラミングすることで①エネルギー代謝シグナルを調節し癌細胞の増殖を促し、②オートファジーを用いた細胞生存シグナルから癌細胞死を抑制し、③MRP2などの細胞膜輸送蛋白質を通して抗癌剤耐性に寄与している。 本研究において、初めに頭頸部癌における癌代謝の役割を頭頸部癌組織標本を用いて検証した。頭頸部癌において、中咽頭癌(30例)と慢性扁桃炎(17例)の組織を用いたヘキソキナーゼ2の発現を測定した。ヘキソキナーゼの免疫組織学的検討で中咽頭癌、慢性扁桃炎ではそれぞれ発現スコアが、59.7±29.4、10.2±12.6であり、中咽頭癌において有意に非癌組織である慢性扁桃炎に比べて発現スコアが有意に高いことが分かった(p<0.001)。以上の結果から、頭頸部癌においても癌代謝系が亢進しヘキソキナーゼが活性化していることが分かった。しかし、ヘキソキナーゼ2の発現強度と中咽頭癌症例の全生存率に間には有意な相関は見られなかった。これは症例数が30例程度と少なかったことが影響していると推測する。 今後は、頭頸部癌細胞株を用いてヘキソキナーゼ阻害剤を用いて既存の化学療法(シスプラチン)との併用において、抗腫瘍効果などに相乗効果が得られるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭頸部癌と癌代謝研究において、まずは中咽頭癌を用いた免疫組織学的検討から予想どうりの結果が得られた。今後はin vitroの検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、頭頸部癌細胞株を用いてヘキソキナーゼ阻害剤の抗腫瘍効果を検証したい。特に既存のキードラッグであるシスプラチンに対して、併用することで抗腫瘍効果の向上が得られるかを検証する。またその際のオートファジーなどのメカニズムも検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定薬品、使用細胞が想定よりも少なく済んだため、次年度に繰り越す。繰越額は173,080円であり、引き続き本研究のための物品、薬品購入にあてる予定である。
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