研究実績の概要 |
がん細胞は低酸素・低栄養環境で増殖能・転移能を維持するため解糖系を亢進させることが知られている。FDG-PET検査は癌細胞のこの特性を利用した画像診断法であり、治療ターゲットとしても注目されている。甲状腺癌でも術前・術後評価でFDG-PET検査が多用されが、時折原発部位や転移リンパ節に集積が認められない症例を経験することがある。今回当科で2010年から2020年に手術が行われた転移リンパ節を伴う甲状腺癌症例41例において原発部位、リンパ節それぞれをHK2, GLUT1, VEGFAで免疫染色をおこないSUV値との関連について検討を行った。免疫染色の結果、HK2とVEGFAの発現率とSUV値に相関を認めFDG-PET検査で集積が高い症例では解糖系の亢進の程度が強いことが示唆された。次に、手術検体を用いて患者由来甲状腺癌オルガノイドを作成した。同意の得られた症例の患者標本から3Dのオルガノイドを作成し、70%以上で培養に成功した。作成したオルガノイドに糖代謝阻害薬であるベンセラジド塩酸塩を投与した。ベンセラジドの濃度を上げることでいずれも抗腫瘍効果が得られたが、特にSUV値の高い症例では抗腫瘍効果が高い傾向にあることがわかった。癌の悪性化のキーである代謝異常に関して、本研究において糖代謝とPETーSUVの関連など診断的な面からと、糖代謝阻害剤であるベンセラジドを用いて治療応用の可能性を示すことができた。
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