鼻科手術を受けた患者の鼻腔洗浄液を回収し、鼻腔洗浄液中のエクソソーム濃度をELISA法で測定した。計測したすべての検体でエクソソームが検出された。一部の検体を用いて、鼻腔洗浄液からエクソソームを単離・精製した。ナノサイト解析により粒子径と粒子濃度分布を測定した。鼻腔洗浄液からエクソソームが回収でき、プロテオーム解析に十分な量の蛋白を抽出できることを確認した。回収したエクソソームから抽出した蛋白のショットガン解析により、エクソソームマーカーCD9、CD63、CD81が検出されていることを確認した。 培養細胞を用いた検討では、末梢血好酸球あるいは好酸球性細胞株EoL-1細胞と好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸線維芽細胞の共培養を行った。共培養によって上清中のエクソソームとVEGF産生が有意に増加した。線維芽細胞から放出される細胞外小胞を回収し、ナノサイト解析により粒子径と粒子濃度分布を確認した。線維芽細胞から回収した細胞外小胞をEoL-1細胞に加えると上清中のVEGF濃度が上昇した。エクソソーム阻害薬は共培養時のエクソソームおよびVEGF産生を共に抑制したことから、好酸球と鼻茸線維芽細胞の細胞間相互作用によってVEGF産生が生じ、その機序にエクソソームが関与することがわかった。 以上の検討から、ヒト検体を用いた検討では、鼻腔洗浄液中のエクソソームが回収できることを示した。今後解析結果から病態との関連について検討する。培養細胞を用いた検討では、新しい細胞間情報伝達物質として、エクソソームを含む細胞外小胞が好酸球性副鼻腔炎の組織リモデリングに関与することを示すことができた。
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