研究課題
上気道好酸球性炎症の表現型解析による精密医療の開発を目的として下記の研究成果が得られた。これまでの成果として、1)鼻副鼻腔における一酸化窒素(NO)産生とレドックス制御からみた粘膜組織障害機序の解明。関連遺伝子の中でLOX-1遺伝子・蛋白が対照群に比較して、有意に発現亢進を認めた。臨床重症度(CTスコアなど)にも正の相関が見られた。2)NO合成酵素(NOS)の遺伝子多型の解析。NOS2 のプロモーター領域のCCTTT 反復数を同定し、L/L群、L/S 群と S/S 群で比較を行った。その結果、篩骨洞粘膜において好酸球性副鼻腔炎(ECRS)と鼻アレルギー(AR)の有無において相違が認められた。3)ECRSに対する標準術式の開発。粘膜移植片からのポリープ再発は認められなかったが、neo-ostiumの形態と開存性は残存粘膜の状態により狭小化しうることが判明した。本年度の成果としては、4)鼻副鼻腔粘膜におけるSARS-CoV-2関連受容体の発現制御機構の解析と、NO産生を介した感染防御機構の解析。新型コロナウィルス感染に鼻副鼻腔炎病態が及ぼす影響を検討した。SARS-CoV-2は鼻腔粘膜への強い親和性を有しており、宿主側受容体であるACE2とTMPRSS2が共発現していることが想定されている。そこでACE2の発現制御機構の検討と慢性鼻副鼻腔炎病態に伴う変化を解析した。5)トランスクリプトーム解析によるエンドタイプの検討。オミクス解析により正常controlと比較し、ECRSおよびnon-ECRSとも明らかな相違が確認され病態形成に関与していることが想定された。6)臨床データ収集によりJESREC studyの診断基準の妥当性について検討した。当院呼吸器内科と診療連携し、重症喘息に対して抗体製薬を使用した症例についてECRS の合併有無と気道過敏性に対する有効性について解析した。
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