研究課題
嚥下運動のメカニズムを明らかにする一つの方法は、嚥下に関わる筋と器官の活動機構を可視化することである。そこでわれわれは、医用画像技術と解剖学的知見を活用して生体数理モデルを製作し、食品については実験値を利用して食品数理モデルを製作し、コンピュータシミュレーションによって嚥下のメカニズムを解明する研究に取り組んでいる。本研究では嚥下のコンピュータシミュレーション(Swallow vision)を用いる。 Swallow visionは、医用画像を基に製作する生体数理モデル(以下、生体モデル)と実測や実験の結果を基に製作する食品数理モデル(以下、食品モデル)、さらに生体モデルと食品モデルを統合した粒子法によるコンピュータシミュレーション、そしてシミュレーション結果の妥当性検討の4つのステップを経て作られる。通常の頭頸部のCT撮影により得られたDICOM画像をもとにして、顎骨、頸椎、舌骨そして鼻腔や咽頭を自動描出し、一部は手動で描画した。それを3D-CG(3dsMax、Autodesk社製)ソフト上の三次元空間に貼り付けて、形態やポリゴンを修正した後、嚥下造影検査(VF)画像の各フレームに対応する立体形状モデルを製作した。さらに嚥下終了時のVFの正面と側面のフレーム画像と先のデフォルトモデルをCG ソフトウェア上に配置して、コンピュータシミュレーションによる立体形状モデルを製作した。本年度は、本モデルを活用して、粘弾性や潤滑性などの性状が異なる食物の嚥下器官内での動きを理論的にシミュレーションし、誤嚥のパターン解析と食物形態を変えることによる誤嚥防止法を検討した。
2: おおむね順調に進展している
頭頸部CT撮影によるDICOM画像と、VF画像から嚥下の立体形状モデル作成を行う手技を確立することができている。それを基にして、食物の性状を変化させて、誤嚥のリスクの変化を視覚的にシミュレーションすることを進めている。
Explicit Moving Particle Simulation(EMPS)法により食品の流体解析を行う予定である。これにより粘弾性、付着性、曳糸性などの食品に特有な複雑な物理モデルを作成する。それに基づいて、様々な性状の食物による嚥下器官内での動きの違い、およびそれによる誤嚥の違いを理論的に解析する。また、実際の患者における食物の性状と誤嚥の違いを嚥下内視鏡検査および嚥下造影検査により評価し、嚥下シミュレーションの結果の妥当性について検証し、臨床応用に向けた有用性と課題について検討する。
新型コロナウイルス感染拡大のため、研究成果発表のための学会参加旅費や研究打合せの旅費が当初予定より大きく減額となった。2021年度は研究成果をまとめて学会発表や論文投稿を行う予定であり、研究助成金はこれらの研究活動に充当する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 6件) 図書 (5件)
Auris Nasus Larynx
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