研究課題/領域番号 |
19K09854
|
研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
伏木 宏彰 目白大学, 保健医療学部, 教授 (00262519)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 中枢性めまい / 離散的フーリエ変換 / 視覚ー前庭相互作用 / 平衡機能検査 |
研究実績の概要 |
めまい・平衡障害の原因は診療科の枠組みを超えて多岐にわたる。内耳障害、脳梗塞・出血や変性疾患、奇形や腫瘍など小脳や脳幹を中心とした中枢の障害によるめまい、血液循環の調節障害、頭痛、精神疾患によるめまいもある。中枢での視覚と前庭の相互作用に着目して、人工的に前庭性温度眼振を誘発して視刺激検査を行い、中枢の平衡機能障害をより鋭敏に診断する検査法を開発するために専門家と意見交換し以下を実施した。 1.温度眼振出現中に自動的に被験者の眼前に視標が提示され経時的に追跡眼運動が行えるiPhoneアプリを制作した。 2.健常成人13例(26耳)を対象に検査を行い、追跡眼運動中の複合眼運動を記録した。離散的フーリエ変換を用いて複合眼運動を追跡眼運動と前庭性眼振成分に分け、追従パターンおよび前庭性眼振の抑制率を検討した。 3.追従パターンは円滑で、追跡眼運動中の温度眼振抑制率は、温度眼振の緩徐相方向への視刺激では69.0±16.6%、急速相方向への視刺激では52.9±26.6%であった。眼振抑制率は、以前我々が医療機器(製造中止)を用いて行った健常成人の平均値と同等で中枢性めまい患者の平均値より有意に高かった。 これらの成果に関して学会発表を行い、視刺激アプリの実効性や眼球運動観察・記録から離散的フーリエ解析にいたる過程、検査の有効性、検査の負担などについて意見を交換した。本検査システムがめまい診療に普及することにより、診断精度が高まり複数の診療科や病院を受診しても適切な診断がつかないまま医療機関を渡りさまよう、いわゆる『めまい難民』を一人でも多く救うことが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者・研究補助者の新型コロナウイルス感染リスクを避けるために、研究遂行がやや遅延している。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、健常成人の前庭性温度眼振出現中の視運動性眼振の解発パターン分析および前庭性眼振の抑制率を検討し、臨床応用可能かどうかを検討する。 2021年度は、研究代表者が所属する診療施設に通院中の中枢性めまい患者、特に小脳器質病変を有するめまい患者を対象として本検査システムの検査の有効性を検証する。 研究遂行上、研究協力者・研究補助者のコロナウイルス感染リスクが問題となる。感染の蔓延状況を把握し適切に判断して研究を遂行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
複合眼運動をCCDカメラによる動画記録および解析システムを構築するため機材を揃える必要がある。特別仕様の眼球運動記録システムのため調整が必要である。2019年度購入予定であったが納入時期が年度を超えたため今年度の計画に入れた。
|