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2020 年度 実施状況報告書

難聴・平衡障害における破骨細胞の関与に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 19K09855
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

神崎 晶  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード耳小骨 / 中耳炎 / LPS / 破骨細胞
研究実績の概要

ヒトやマウスにおいて正常、疾患いずれの状態においても耳小骨における破骨細胞の局在や変化については報告がない。今回、Lipopolysaccharide(LPS)投与による中耳炎による耳小骨の骨溶解と骨形成について解析を行い、病態を解明することで、中耳炎による難聴の予防法も解明されることになる。中耳炎の機序の解明は治療の開発にもつながる。中耳炎は世界的に多く見られる疾患で,WHO(世界保健機関)によると貧困の最大原因といわれている。耳小骨は音を伝える骨である。他の骨と同様に、発生・発達期は他の骨と同様に破骨細胞と骨芽細胞の代謝により骨形成が起こる(骨のリモデリング)が、一度形成された骨は代謝が不活発となる(未発表データ)。このような骨リモデリングにおいて、申請者は、耳小骨における破骨細胞の分化制御に関する因子であるRANKL、Opg が変化すると機能異常が生じることを3 つの論文で報告してきた(Kanzaki S. Bone 2006 、Kanzaki S. J Bone Mineral Res.2009、Kanzaki S. Am. J.Pathol. 2011)。破骨細胞が増加するマウスでは耳小骨は周囲骨と癒合し、ヒトの耳硬化症と同じ病態になることを示した(本業績で2005 年にPolitzer 国際耳科学会賞賞)。さらに上記マウスに対して骨粗鬆薬を用いて増加した破骨細胞を減らすことで聴力が改善することを示した。破骨細胞が存在しないマウスでは、耳小骨が肥大化し、中耳壁骨に接してしまうことで音の振動が伝わらなくなり、難聴を呈することを示した。以上のように骨のリモデリングの破綻によって骨代謝の変化が生じて耳小骨が破壊されるメカニズムが想定されるが、現在この領域の詳細は不明である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナの影響で実験が予定より遅れていたが、2020年度はマウス耳小骨内の破骨細胞の解析を継続して行った。成獣マウス耳小骨では他部位の骨組織と比較して、破骨細胞が少なく骨のターンオーバーがほとんど行われていない。細菌由来LPS を投与した中耳炎モデルマウスの破骨細胞の発現を解析した。中耳炎発症して1週間すると耳小骨骨表面に破骨細胞が発生することを報告している。3つの耳小骨によって発現パターンが異なることをつきとめた。ただし、骨表面の破骨細胞の発現については解析されているが、骨内部に発現しているかどうか解析を行った。骨表面ではなく骨内部の破骨細胞が血管周囲に存在していることから、骨髄から中耳の血流にのって破骨細胞が発生することが推測された。今後、中耳における破骨細胞と骨芽細胞の発現を骨の透明化を行って評価した報告は今のところない。中耳炎による骨破壊が生じて難聴をきたすことになるが、この機序が解明されることで、難聴の予防法が開発されることが期待される。

今後の研究の推進方策

細菌由来LPSをマウス耳内に投与して中耳炎モデルを発生させる。LPS はサイトカインを生じて耳小骨溶解を起こさせる。その際に破骨細胞が発現し、その後骨形成が発現すると考えられる。上記細胞の発現パターンについて解析し、骨代謝について考察する。なお、破骨細胞発生後に骨芽細胞が発生することをマーカーを用いて示す。なお、対側には生理食塩水を入れて対照群として、耳小骨における同一個体における骨代謝の差異を確認する。2)さらにマウスにとどまらず、解剖学教室の協力を得て、ヒトご遺体の耳小骨を摘出し、通常の耳小骨における恒常性についても解析する(倫理委員会申請済)。ヒトとマウスの耳小骨はそれぞれ3つであるが、ツチ骨、キヌタ骨の形態はヒトとマウスでは異なっている。マウスの骨代謝がヒトと同一である前提で研究を進めてきたが、その差異を確認することが必要である。上記2つの実験とも耳小骨を透明化させて破骨細胞と骨芽細胞の立体構造を解析する。われわれは世界に先立ち、破骨細胞や骨芽細胞のマーカーを用いてマウス病態や正常ヒト耳小骨の骨代謝について、骨を透明化させて骨内部の破骨細胞の発現について解明を継続している状況である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍で国内外の学会がオンライン化したため、2020年度は旅費が発生しなかった。次年度予定している消耗品の費用として使用予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Surgical Treatment of Otosclerosis Using a Unique  Stapes Prosthesis Without Hook.2020

    • 著者名/発表者名
      Kanzaki S,Kanzaki J,Ogawa K.
    • 雑誌名

      Acta Otolaryngologica

      巻: ー ページ: ー

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Application of Mesenchymal Stem Cell Therapy and Inner Ear Regeneration for Hearing Loss:2020

    • 著者名/発表者名
      Kanzaki S, Toyoda M, Umezawa A, Ogawa K.
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci.

      巻: 21(16) ページ: ー

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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