• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

難聴・平衡障害における破骨細胞の関与に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 19K09855
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

神崎 晶  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード破骨細胞 / 中耳炎 / 骨溶解
研究実績の概要

慢性中耳炎で耳小骨が溶解して音が伝わらなくなった結果、難聴になる。溶解の機序として耳小骨の骨代謝を担う破骨細胞と骨芽細胞のバランス(骨リモデリング)が崩れ、破骨細胞優位になってしまうことが想定される。本研究では上記の仮説を検証するため、LPS投与により耳小骨に破骨細胞が誘導されるか、誘導された場合に局在性があるかを観察した。
方法 マウス(C57/BL6マウス7-8週齢)の右耳に緑膿菌由来Lipopolysaccharide(LPS)を鼓室内投与して中耳炎モデルを作成し、左耳には生理食塩水(生食)を入れて対照群とした。LPSはサイトカインを生じて耳小骨溶解を起こさせる。投与1週間後にマウスを犠牲死させて、両側の耳骨胞を摘出し、固定・脱灰をした後にパラフィンブロックを作製した。ツチ骨を含んだパラフィン切片を作成し、破骨細胞のマーカー(CtsK,MMP9)と血管マーカー(Endomucin,CollagenⅣ)を用いて免疫染色を行った。
また、破骨細胞の局在を3次元的に解析するために、破骨細胞を赤色蛍光蛋白で標識したTRAP-tdTomatoマウスでもLPS投与を行い、ツチ骨を単離後、透明化処理を行った。透明化したツチ骨は共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて観察した。
結果 パラフィン切片を免疫染色した結果、LPS投与群のツチ骨において、血管の周囲に多核細胞が出現し、その細胞が破骨細胞のマーカーであるカテプシンKやMMP9陽性であることが確認された。透明化サンプルでは、3個体中1個体においてLPS投与によりツチ骨内の血管に沿ってTRAP-tdTomato陽性の破骨細胞が出現する様子が観察できた。
結論
LPS単回投与により耳小骨内で破骨細胞が誘導される可能性があり、破骨細胞が誘導される場合、血管周囲に局在すると結論付けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020-2021年がコロナのため、実験を予定通り実施できなかったことがあり、遅れたまま現在に至っている。

今後の研究の推進方策

今回LPS投与により惹起された炎症が慢性中耳炎では繰り返し、その度に破骨細胞が誘導されることによって、骨融解が起き、難聴となると推測される。LPS投与群において誘導された破骨細胞数に差が確認されたのは、炎症の程度に差があったため誘導されたサイトカイン・破骨細胞誘導時期に差が出たものと推測される。
今後は、中耳炎モデルの中耳洗浄液からサイトカインアレイを用いて、中耳炎発症時の炎症性サイトカインの発現を確認していく予定である。IL-1や6などのサイトカインが発現し骨溶解をきたす可能性があると予想している。破骨細胞のみならず、骨芽細胞の発現についても時系列に経過を追跡していきたい。
さらに、LPSの反復投与を実施し反復性中耳炎、慢性中耳炎モデルを確立したので、これらのマウスでサイトカインの発現や破骨細胞の発現についても解析を進めていきたい。
また、マウス耳小骨とヒト耳小骨の差異も臨床応用を検討する上では重要であり、慶應義塾大学の倫理委員会の承認を得て、ヒト耳小骨も摘出し、動物種の差異について検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究期間内に実施したい研究が完遂できなかったため、現在2022年度に実施しており、2022年度中には論文投稿する見込みがあるため。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Comparison of Drug Availability in the Inner Ear After Oral, Transtympanic, and Combined Administration2021

    • 著者名/発表者名
      Li Yang、Kanzaki Sho、Shibata Shinsuke、Nakamura Masaya、Ozaki Masahiro、Okano Hideyuki、Ogawa Kaoru
    • 雑誌名

      Frontiers in Neurology

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fneur.2021.641593

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Three cases of otitis media caused by Mycobacterium abscessus subsp. abscessus: Importance of medical treatment and efficacy of surgery2021

    • 著者名/発表者名
      Nishiyama Yuri、Nishiyama Takanori、Kanzaki Sho、Oishi Naoki、Fujioka Masato、Yamada Hiroyuki、Ebisuno Chihiro、Kaiho Mayumi、Uwamino Yoshifumi、Fukano Hanako、Hoshino Yoshihiko、Hasegawa Naoki、Ogawa Kaoru
    • 雑誌名

      Journal of Infection and Chemotherapy

      巻: 27 ページ: 1251-1257

    • DOI

      10.1016/j.jiac.2021.04.012

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pros and Cons of the Exoscope for Otologic Surgery2021

    • 著者名/発表者名
      Kanzaki Sho、Takahashi Satoshi、Toda Masahiro、Yoshida Kazanari、Ogawa Kaoru
    • 雑誌名

      Surgical Innovation

      巻: 28 ページ: 360-365

    • DOI

      10.1177/1553350620964151

    • 査読あり
  • [学会発表] 中耳炎でなぜ難聴になるのか?  ―耳小骨溶解の機序の解明―2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木開、黒田有希子、松尾光一、神崎晶
    • 学会等名
      第31回日本耳科学会
  • [学会発表] ヒスタミンと鼻アレルギーと中耳の破骨細胞2021

    • 著者名/発表者名
      神崎晶
    • 学会等名
      第31回日本耳科学会
  • [図書] Methods Molecular Biology, Bioluminescence,2022

    • 著者名/発表者名
      Kanzaki S, Shibata S, Nakamura M, Ozaki M, Okano H.
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      nature springer

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi