中耳炎によって耳小骨が溶解し難聴になってしまうことが臨床上問題であるが、詳細な機序についてはわかっていない。そこで、われわれは、Lipopolysaccharide(LPS)を中耳内に単回投与した中耳炎モデルを用いて、マウス中耳洗浄液中IL-6の上昇がみられた。さらに、破骨細胞の血管周囲誘導像が3次元的にみられた。破骨細胞や血管走行の3次元的解析である。破骨細胞を赤色蛍光タンパク質で可視化できるTRAP-tdTomatoマウス鼓室内にLPSを27G針で投与し、別個体には生食を鼓室内投与し対照群とした。投与3日後にマウスを犠牲死させ、単離した中耳骨胞、各群4サンプルずつを透明化処理しました。そしてマルチアングルライトシート蛍光顕微鏡で撮影、IMARISで破骨細胞の局在や血管走行などを3次元的に解析した。micro CTより高い解像度のnano CTを用いてマウス耳小骨2サンプルを解析し、ヒト耳小骨と同じく、表面の一定部位に複数の孔が存在することを確認した。中耳炎により難聴となる機序の1つとして、LPSにより炎症細胞が惹起され、誘導された破骨細胞が耳小骨内血管に作用し、血流を増やすことにより、サイトカインネットワークが増幅される、という仮説が考えられる。今後の展望として、さまざまなサイトカインを網羅的に解析し、破骨細胞が誘導されるプロセスを明らかにしていくことが期待される。本研究課題は骨に包まれた臓器透明化、ならびに血流に関する研究として、内耳の構造や血流の研究にも応用できると考えている。
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