研究課題/領域番号 |
19K09867
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
喜多 知子 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20362519)
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研究分担者 |
大森 孝一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10233272)
中村 亮介 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40736708) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 蝸牛有毛細胞 / 鳥類 / YAPシグナル |
研究実績の概要 |
我々は、当科で確立された孵化1日齢ヒヨコ内耳蝸牛の感覚上皮(BP)の器官培養系による「有毛細胞再生モデル」において、YAPシグナルとNotch/Wntシグナルとの寄与および相互作用を解明すべく検討を進めてきた。今年度は、in vitro BP再生モデルにおいて、YAP/Notch/Wntの阻害剤(YAPについてはagonistも)による薬剤添加実験を行い、一定時間ごとに採取・固定し標本ブロックを作製した。そして、その(Distalから40%位置の)凍結切片の免疫染色評価にあたり、他の研究課題(*)で我々が発見し特定した評価項目を用いた。以下にその結果を示す。(*):「鳥類内耳有毛細胞再生初期過程の解明:哺乳類における有毛細胞再生効率化への応用」、研究代表者・中川隆之、科研費基盤C(20K09708)、2020-2023 ・CD44陽性細胞はNaiveのBPにおけるNeural側とAbneural側に局在する内耳幹細胞と考えられ、YAPは陽性であったがその局在は細胞質であった。 ・Agr3は支持細胞の、Sox2/MyoVIIa共陽性細胞は再生有毛細胞の各々マーカーと考えられ、再生BPにおいて、YAPは、主にNeuralと(Abneural側でない)中間部位のSox2/MyoVIIa共陽性細胞と共局在し、一時的な核移行を示した。 ・YAPの阻害剤/増強剤の結果、YAPは細胞障害およびアポトーシスを抑制する作用を有することが明らかとなった。 ・NotchやWnt阻害剤添加により、YAPの発現部位および発現細胞数が変化したが、それが、再生有毛細胞数の変化に伴う結果なのか原因なのか?についてはわからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗は予定通りであり、上記の研究実績を挙げることができた。 一般的に、哺乳類における有毛細胞再生過程では、in vivo/in vitroともに主に直接分化転換しか起こらず、それが周囲を取り巻く支持細胞の減少ならびに聴覚再生の不完全性をもたらすことに繋がると言われている。本研究で得られた知見によって、3つのシグナル(YAP/Notch/Wnt)が蝸牛有毛細胞の直接分化転換による再生過程にどうかかわっているか?が明らかにされれば、哺乳類における増殖を伴う再生の再現と聴覚再生への糸口がみつかると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、「有毛細胞の再生過程におけるYAPシグナルの役割」について、既知のNotchまたはWntシグナルとのかかわりを含め解析することを目的とする。これまで、YAP (Yes-associated protein) は、Hippo腫瘍抑制経路で幹細胞と前駆細胞との増殖活性を調節する転写因子として知られ、主に器官サイズを制御するとされている。一方で、その細胞内シグナルにおいて、Notch/Wntとのクロストークが報告されているものの、特に発生・再生過程における詳細機構は未だ明らかでない。 これまで、上記研究実績を挙げてきたが、今後、YAP/Notch/Wntシグナルのクロストークのより詳細な解明のために以下を検討できればと考えている。①より細かな時間経過観察、②シグナル下流分子の発現確認、③RNAseqによるシグナルの包括的な変化解析。 とはいえ、まず第一に、これまで得られた結果をもとに、論文原稿の作成および投稿を優先したい。査読者からのコメントに従い、上記を含めた追加実験を行い、年度内のアクセプトを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で得られた成果を投稿するための、英文校正費ならびに投稿料のため
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