研究課題/領域番号 |
19K09877
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
五島 史行 東海大学, 医学部, 准教授 (80286567)
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研究分担者 |
永田 栄一郎 東海大学, 医学部, 教授 (00255457)
室伏 利久 帝京大学, 医学部, 教授 (30242176)
北原 糺 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30343255)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前庭性頭痛 / オートファジー / TRPA1、4 / 前庭細胞 / エクソソームmiRNA |
研究実績の概要 |
我々は、内耳細胞HEI-OC1を用いた予備実験において、エクソソームmiRNA let-7bは、TLR7に結合し、かつToll-Like-Receptor (TLR)-7を発現増加させることを確認している。その際に、TLR7は侵害性受容体TRPA1を刺激し、細胞興奮マーカーp-ERKを時間依存性に増加させることを確認している)。ところが、非常に興味深いことに、内耳細胞HEI-OC1細胞をTLR7 agonist (Loxoribine)にて処理した場合、TRPA1の発現とp-ERKの発現は変化しなかった。ところが、TRPA1 agonist (AITC)処理した場合、時間依存性にTRPA1と細胞興奮マーカーp-ERKは発現増加することを確認した(図1)。さらに、TRPA1 Knock Down (KD)細胞をエクソソームmiRNAに処理しても、e-ERKは誘導されることはないことも確認した(図2)。今回、我々の行った実験結果は、内耳感覚細胞においてエクソソームmiRNA let-7bによる細胞興奮は、TRPA1がTLR7と有機的な結合することによってのみ誘導される現象であり、TRPA1は細胞興奮のドライバー遺伝子の役割を果たす可能性を示唆する非常に興味深い結果である。 一行で、前庭培養細胞UB/UE-1を、小胞体ストレス誘導剤Tunicamycin (TM)処理した場合、時間・濃度依存性に細胞生存率の低下を認めた。しかし、UB/UE-1はHEI-OC1と比較すると、細胞生存率の低下率は低いことを確認した。この結果は、あくまでもin vitroでの実験系の限られた条件ではあるが、前庭細胞は内耳細胞よりも小胞体ストレスの影響を受けにくい可能性を示唆する結果であり、蝸牛と前庭の細胞ストレス反応の違いを示す手がかりになる可能性を示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように、我々は、内耳感覚細胞においてエクソソームmiRNA let-7bによる細胞興奮誘導において、TRPA1はドライバー遺伝子の役割を果たし、TRPA1がTLR7と有機的な結合することによってのみ細胞興奮が誘導されることを確認できた。また、前庭細胞と内耳細胞は、小胞体ストレス反応にも違いがあることも実験的に確認できた。これらの結果は、前庭性頭痛のバイオマーカーとして、エクソソームmiRNA let-7bが有用であり、TRPA1は、ドライバー・シートとしてTLR7に結合し機能する必要があることの一端を証明することができた。その点において、前庭性頭痛の臨床症状の基礎的解明の第一歩になる極めて重要な結果を得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体ストレス誘導剤処理前庭細胞と初代神経培養細胞の培地から各エクソソームを単離する。単離したエクソソームが神経-血管-グリア細胞ユニットに与える影響について検討するため、エクソソーム曝露初代培養神経細胞、前庭細胞あるいは血管内皮細胞を共培養し、オートファジーを中心とした神経細胞死・血管内皮細胞死シグナル解析の分子シグナル解析、TRPA1との相互作用をする遺伝子の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
雇用者の休暇のため人件費が想定外に余ったため次年度使用額が生じた。前述した本年度研究推進方策に沿って、初代神経培養細胞、血管内皮細胞の購入、エクソソーム抽出キット、異種細胞の共培養システムの構築、オートファジーを中心とした神経細胞死・血管内皮細胞死シグナル解析の分子シグナル解析用の抗体の購入、TRPA1とクロストークする蛋白質の探索と解析に関する受託サービスの利用等に研究費を使用する予定である。
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