研究課題/領域番号 |
19K09879
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀明 産業医科大学, 医学部, 教授 (20187751)
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研究分担者 |
大淵 豊明 産業医科大学, 医学部, 講師 (00412651) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 線毛運動 / 鼻粘膜 / 細胞内カルシウム / 膜電位 / 振動 / 単離細胞 / 電位依存性カルシウムチャネル |
研究実績の概要 |
(1)下鼻甲介切除術で切除したヒト鼻粘膜を培養液中に浸し、直ちにブラッシング法により上皮細胞を剥離させ単離した。この細胞の浮遊液を、アドヘッシブ・スプレーを振りかけた薄底ディッシュに移した。底面に貼り付いた線毛上皮細胞を倒立顕微鏡で観察し、好感度高速度ビデオカメラ(DITECT HAS-D71)で撮影した。 (2)次に、活発な線毛運動をしている単離線毛上皮細胞に膜電位蛍光分子プローブを加え、膜電位の変化を観察した。膜電位プローブとしてDiO/dipicrylamineとdi-4-ANEPPSを用いた。蛍光強度の経時的変化を画像上の256段階ピクセル値として計測し、これを高速フーリエ変換して解析した。しかし、特定の周波数に対応する蛍光の振動は検出できなかった。その明らかな理由は分からないが、細胞内カルシウム濃度の変化と同様に、膜電位の変化も非常に微弱であることが原因の1つとして考えられた。 (3)そこで研究アプローチを変え、線毛表面にカルシウムチャネルが存在するかどうかについて探索した。カルシウムチャネルの中でもT型電位依存性カルシウムチャネルは、小脳や洞房結節において細胞内カルシウム振動の発信器と考えられており、緑藻、ゾウリムシ、精子などの鞭毛に発現していることが報告されている。 (4)採取した鼻粘膜を蛍光免疫染色し、T型電位依存性カルシウムチャネル(Cav3.1、Cav3.2、Cav3.3)、およびR型電位依存性カルシウムチャネル(Cav2.3)の発現を調べた。その結果、上皮細胞にCav3.1とCav3.3が発現していることが判った。 (5)さらにRT-PCR法により調べると、Cav3.1とCav3.3のmRNAが発現していることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単離した線毛上皮細胞を使った細胞内カルシウム濃度の振動、膜電位の振動については検出できなかった。変化量が非常に微弱で、ノイズに埋もれてしまったことが原因ではないかと考えられる。この問題を解決するには、さらに感動の高い高速度ビデオカメラを用いることや、単離した線毛上皮細胞が自身の線毛運動で動揺するのを抑制する技術が必要であり、短期間での達成は困難であるため将来の課題とした。本研究では異なるアプローチをとることとし、まず免疫組織学的に鼻粘膜上皮細胞にT型電位依存性カルシウムチャネルのCav3.1とCav3.3が発現していることをつかみ、さらにRT-PCRによりこの2つのチャネルが転写レベルでも発現していることを示したことは非常に大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
線毛上皮細胞におけるT型電位依存性カルシウムチャネルの存在を、さらに種々の研究手法により裏付けていく。実際には免疫電子顕微鏡による超微形態レベルでの局在、Western blot法によるタンパクレベルでの発現を調べる。さらにT型電位依存性カルシウムチャネルの特異的拮抗薬を用い、ex vivoの環境で線毛運動の抑制が起こるかどうかについても検討し、薬理学にこのチャネルが存在し、機能していることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の次年度使用額は1000円未満の少額であり、物品購入の金額を端数まで合わせることができなかったことが主な理由である。次年度予算に組み込んで物品等の購入に使用する予定である。
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