研究実績の概要 |
(1)下鼻甲介切除術で採取したヒト鼻粘膜を細い帯状にカットして培養液中に浸し、粘膜表面の線毛運動を高速度ビデオカメラで撮影して線毛運動速度を測定した。これにT型電位依存性カルシウムチャネルの特異的拮抗薬であるmibefradil(10μM)やNNC55-0396(10μM)を添加すると線毛運動速度は有意に抑制された。 (2)cAMP/cGMPのanalogueである8-bromo-cAMP (100μM)/8-bromo-cGMP (100μM)を添加すると線毛運動速度は有意に促進されたが、この促進作用はmibefradilやNNC55-0396によってブロックされた。 (3)採取した下鼻甲介粘膜表面をブラッシングして単離した線毛細胞に細胞内カルシウム指示薬(Fluo-8, 5μM)を負荷し、細胞内カルシウム濃度の変動を再度測定した。そしてmibefradilやNNC55-0396によって細胞内カルシウムが低下することを再確認した。 (4)採取した鼻粘膜を直径4mmの円形にくり抜いて培養液に浸し、ATPの放出量をluciferin-lucifrase assayによって測定した。その結果、ATP放出量はmibefradilやNNC55-0396を添加しても変化しなかった。 (5)以上の結果、および昨年度までの結果を踏まえると、ヒト鼻粘膜線毛細胞にはT型電位依存性カルシウムチャネルCav3.1とCav3.3が存在し、細胞内へのカルシウム流入を通して線毛運動の制御に関与していることが分かった。さらにこの線毛運動の制御経路において、cAMP/cGMPの作用やATP放出反応はT型電位依存性カルシウムチャネルよりも上流で起こっていると考えられた。
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