研究課題/領域番号 |
19K09880
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
鷹合 秀輝 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究室長 (70401354)
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研究分担者 |
大島 知子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50731783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内耳 / 蝸牛 / 有毛細胞 / リボンシナプス / Otoferlin / 超解像顕微鏡 / グルタミン酸イメージング / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
内有毛細胞と蝸牛神経を繋ぐ求心性シナプス(内有毛細胞リボンシナプス)においてグルタミン酸が神経伝達物質として用いられており、この部位の障害によりオーディトリーニューロパチーが引き起こされる。本研究では電気生理学的手法であるパッチクランプ法に光学的手法であるSTORM顕微鏡による超解像イメージングとグルタミン酸イメージングを組み合わせ、OtoferlinをコードするOTOFの遺伝子変異による難聴の病態解明を目指す。以下に令和3年度の研究実績を記す。
(1) グルタミン酸イメージングによる機能解析:内有毛細胞リボンシナプスにおけるグルタミン酸放出を測定するための新規ツールとして蛍光グルタミン酸プローブを用いているが、内有毛細胞との結合能が高くないため、秒単位の時間分解能しか得られていない。令和2年度に内有毛細胞と同様のリボンシナプス構造を有する網膜双極細胞を用いてリボンシナプス用にプローブをカスタマイズし、ミリ秒単位の時間分解能を得た。令和3年度は、このプローブを使用して脱分極刺激に対するグルタミン酸放出の時空間動態の解析を試みた。高濃度カルシウムキレート剤存在下に1.5秒の脱分極パルス刺激を行うと、双極細胞軸索終末部からグルタミン酸が2相性に放出され、速い成分はリボン直下、遅い成分はリボンから離れた部位で主に観察された。また、脱分極刺激非依存性に生じる自発性放出についても解析したところ、リボンから離れた部位で主に生じていることが分かった。これらが網膜双極細胞のみでなく内有毛細胞でも当てはまる現象なのか、今後、検討していく。
(2) 免疫染色法による構造解析:免疫染色法により内有毛細胞リボンシナプスの分子局在について検討した。Otoferlinは内有毛細胞の細胞質に均一に分布しており、リボン近傍ではアクティブゾーン蛋白質のBassoonと共局在していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1) グルタミン酸イメージングによる機能解析 内有毛細胞と共通のシナプス構造を有する網膜双極細胞からの神経伝達物質放出をグルタミン酸イメージングによりミリ秒単位の時間分解能で記録することは可能となったが、マウス内有毛細胞リボンシナプスを対象としたグルタミン酸イメージングは時間分解能が低いままであり改良を要する状況である。
(2) 免疫染色法による構造解析 落射顕微鏡による観察のみに留まっており、超解像顕微鏡による観察を行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1) グルタミン酸イメージングによる機能解析 網膜双極細胞を対象として確立された高時間分解能のグルタミン酸イメージングを内有毛細胞向きに最適化し、内有毛細胞リボンシナプスを対象としたグルタミン酸イメージングを実現させ、野生型およびOtof変異マウスの神経伝達機能を単一シナプスレベルで比較する。
(2) 免疫染色法による構造解析 抗Otoferlin抗体は内有毛細胞の細胞質に均一に分布していたが、内有毛細胞リボンシナプスでの機能(シナプス小胞とシナプス前膜との融合やシナプス小胞の補充の促進)を考えると、むしろOtoferlinがリボンに偏在することが自然なようにも思われるため、今後、抗Otoferlin抗体の種類を変えるなどしても同様の結果になるか検討していく必要がある。その上で、超解像顕微鏡による観察に進む計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度使用額が生じた理由:研究に必要な物品(消耗品)の一部を所属機関の予算にて調達できたため。 使用計画:論文出版費(オープンアクセス)など
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