研究実績の概要 |
【はじめに】我々はこれまでに、「聴覚臨床に役立つ脳機能検査を確立する」という目標を達成するため、聴覚障害者を対象とした脳機能画像データベースを構築してきた。さらに、独自の聴覚中枢ターゲット解析パイプラインを開発し、聴覚疾患の客観的診断や予後予測手法を開発してきた(Minami et al., 2015, Minami et al., 2018)。我々の難聴脳DBと、東北メディカル・メガバンクおよび米国のHuman Connectome Project (HCP)の大量のコントロール脳機能画像データとを組み合わせ、各年代に合わせた聴覚障害者と健聴者とのカットオフを策定してきた(Minami et al., 2020)。脳のSurface-based Morphometry(SBM)は加齢に伴い変化するため、各年代の難聴脳データベース作製し、臨床応用を目指している。両側高度難聴患者の難聴脳と健聴脳のSBMを比較検討した。 【方法】東北メディカルメガバンク(ToMMo)の健聴コントロール群1918人とNHOネットワーク研究の両側70dB以上の高度重度難聴患者群63人の全脳MRIからのSBMデータを用いて、年齢を共変量、各領域の皮質厚を従属変数値として共分散分析を行なった。P<0.01を有意とした。 【結果】左右半球ともに難聴群で皮質厚が有意に薄かった領域は中前頭回尾側、楔部、嗅内野、前頭極、島皮質、帯状回狭、舌状回、中心傍小葉、鳥距溝、中心後回、上前頭回、上側頭回であった。左右一方で有意となったのは、左後帯状皮質、右紡錘状回、右後頭回、右内前窩前頭皮質、右中側頭回、右中前頭回吻側、右上頭頂小葉、右側頭極であった。 【考察】一次聴覚野とされる横側頭回は左右ともに難聴群はコントロール群と皮質厚で有意な差は認めず、聴覚関連領域以外での変化を多く認めた。難聴群の症例数を更に増やし臨床的意義の検討を行なっていく。
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