研究課題/領域番号 |
19K09886
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
竹内 万彦 三重大学, 医学系研究科, 教授 (50206942)
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研究分担者 |
北野 雅子 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20378334)
藤澤 隆夫 独立行政法人国立病院機構三重病院(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構三重病院, 院長 (20511140)
中谷 中 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (80237304)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 線毛 / 遺伝子変異 / 電子顕微鏡 / コピー数 |
研究実績の概要 |
蛋白に変化を及ぼすcopy number variations (CNVs)はヒトの多様性と疾患に関与している。本邦の原発性線毛運動不全症(PCD)の原因遺伝子解析をこれまで一塩基多型を中心におこなってきた。PCDの原因としてのCNVの関与はほとんどわかっていないので、これを明らかにすることを目的とした。 臨床的に本症が疑われる84家系の患者93名(年齢3カ月~64歳)を対象とし、既知の32遺伝子の遺伝子パネルあるいは全エクソーム解析でCNVを検討した。CNVのコールは、サンプルにおけるread数の多寡に基づいた。明らかになったCNVを含む領域をPCRで増幅し、サンガー法でbreaking pointsを確認した。また、鼻粘膜の線毛構造を電子顕微鏡にて検討した。 遺伝子パネルあるいは全エクソーム解析により、21名の患者で、dynein regulatory complex subunit 1 (DRC1) 遺伝子の2コピーの欠失がみられた。これは原因遺伝子が判明した患者の49%を占めた。欠失部位を含めた領域のPCR産物をサンガー法で調べると、DRC1遺伝子のエクソン1~4を含む27,748bpの領域の両アレルの欠失が明らかとなった。21名の患者で欠失部位(breaking points)は全く同じであった。患者の鼻粘膜の線毛形態は多様であったが、軸糸構造の乱れと中心微小管の欠損あるいは増加が主たる所見であった。 これより、DRC1は本邦のPCD患者の主要な原因遺伝子であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで本邦の原発性線毛運動不全症(PCD)の原因遺伝子の多くが判明していなかったが、copy number variations (CNVs)に着目することで、多くの患者で原因となる遺伝子を明らかにすることができた。また、それがDRC1遺伝子の同一部位の欠失であり、これにより多彩な線毛構造の変化がおきることが明らかになった。この遺伝子の欠失は欧米では報告されておらず、日本人あるいはアジア人に特有の変異である可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかになったDRC1遺伝子はこれまで本症の原因であることはわかっていたが、2コピーの欠失は報告はされていないので新規変異である。今後は、まだ明らかになっていない新規遺伝子を見出す方向で症例を重ね、検討していきたい。
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