研究課題
原発性線毛運動不全症(PCD)は慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、不妊を呈し、常染色体劣性遺伝をする難治性の疾患で、内臓逆位を伴わない症例では診断は困難である。この研究では、本症の原因である既知の32遺伝子について遺伝子パネルで解析し、既知の遺伝子における本邦の患者での変異を調べる。それにて変異が見いだせなかった場合、全エクソーム解析を行うことにより、原因となる新規遺伝子を明らかにするという方法をとった。上記の方法で、過去9年間にPCDが疑われた症例の末梢血DNAを用いて解析した。PCDと診断できた症例は90例(1カ月から66歳、男性34名、女性56名)であった。紹介元は、小児科が41例、呼吸器内科が33例、耳鼻咽喉科15例、遺伝子科1例であった。原因遺伝子では、DRC1 31例、DNAH5が29例、DNAH11が7例、CCDC39が4例、その他が18例であった。DRC1が原因であった症例のすべてはエクソン1~4を含む広範囲のホモ接合体の欠失でり、これは東アジアに特有のバリアントである可能性がある。また、これらDRC1の症例では鼻粘膜線毛に軸糸構造の乱れや中心微小管の欠失が電子顕微鏡で確認できた。紹介元の科による原因遺伝子の差はなかった。PCDの確率を予測するPICADARスコアは53名で算出でき、平均は6.9点(14点満点)であった。紹介元の科別では、小児科(8.2点)、耳鼻咽喉科(8点)、呼吸器内科(4.9点)であった。小児科から紹介されてくる症例は新生児期の呼吸器症状を呈する頻度が高く、呼吸器内科からの症例は内臓逆位例が少なく、耳鼻咽喉科医からの症例は副鼻腔炎、中耳炎と診断されている率が高かった。各科で診療されているPCDの臨床像に差異があることがうかがえた。また、GAS2L2による成人同胞例、DNAH8による難治性鼻副鼻腔炎を呈した症例について報告を行った。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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