現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常のラット摘出喉頭から両側声帯を顕微鏡下で剥離後にRNAを抽出し、逆転写してcDNAを作成した。ラットClaudinの23種類のサブタイプについて、それぞれのプライマーをデザインし、定量的PCRを行った。定量的PCR実施にあたってはポジティブコントロールのサンプルを用いて定量曲線を引き、R2>0.98以上のものを採用した。声帯からのサンプル採取に際してはオス13週齢のSprague-Dawleyラットから喉頭を摘出し、実体顕微鏡下で観察しながら声帯上皮を採取した。結果として、クローディン-1, -3, -4, -5, -6, -7, -8, -10, -11, -12, -17, -22, -23のmRNA発現が確認された。クローディンの各サブタイプの機能としては、主にバリア機能を持つもの、チャネルを形成して透過性を与えるもの、サイズ選択的に分子輸送に関わるもの、臓器特異的に発現しているものなどが報告されているが、声帯組織においてはイオンチャネル構成分子として重要なクローディン-2, -15, -16の発現を認めなかった。また、酸バリアとして働くクローディン-18は正常の声帯には発現を認めず、逆流性食道炎に対する声帯組織の易刺激性への関与が疑われた。一方イオンチャネルとして機能するクローディン-7, -10, -17の発現を認めたが、声帯にmRNA発現しているその他のクローディンサブタイプは概ねバリア機能が主要な役割のものであった。発声には規則的な粘膜振動が重要であり、粘弾性を持つ声帯の表面は非角化重層扁平上皮で覆われている。一方で、外界からの微生物や毒物に絶えず曝されており、角質層のない声帯上皮はタイト結合のバリア機能がより重要となる。声帯上皮におけるタイト結合の役割は主にバリア機能であることが推察された。
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