研究実績の概要 |
胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)では、胃酸が食道へ逆流することにより、胸やけなどの不快な自覚症状を感じる。GERDは音声障害との関連も強く、声帯上皮の角化、潰瘍形成、肉芽形成、粘膜産生低下や、声帯溝症などを来し得ることが報告されており、音声障害患者の最大50%にGERDを認めることが報告されている。一方、上皮組織は外部の刺激から粘膜固有層などの深層組織を保護するため、機能的バリアを有する。上皮組織の細胞同士はタイト結合、接着結合、デスモソームからなる細胞間結合によって互いに接着し、深層組織と外界を分けているが、特にタイト結合が機能的バリアの形成に重要な役割を担っている。タイト結合は上皮の頂端側に位置し、隣り合う細胞同士を密着させて細胞間をシールして、組織の恒常性を維持・構築している。タイト結合はオクルディン、トリセルリン、クローディンから形成されるが、クローディンはタイト結合の接着構造形成を担い、タイト結合の形成に関わる主要なタンパク質であることが知られている。しかし、声帯上皮におけるクローディンの発現は不明であった。本研究では、第一段階として、正常ラット声帯上皮において発現している接着分子、特にクローディンのサブタイプを解析した。ラット喉頭をスライスして声帯組織を採取し、RT-PCR法によって正常声帯におけるクローディンサブタイプのmRNA発現を解析した結果、クローディン1, 3, 4, 5, 6, 7, 8 ,10, 11, 12, 17, 22, 23の発現が確認された。さらに免疫染色による各サブタイプの局在解析を行ったところ、クローディン3, 4がタイト結合の部位に発現していることが明らかとなった。今後解析が進めば、咽喉頭逆流症の発症メカニズムにおける上皮バリア機構の役割が解明されることが期待される。
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