研究課題/領域番号 |
19K09891
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大月 直樹 近畿大学, 医学部, 教授 (40343264)
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研究分担者 |
丹生 健一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20251283)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / サイトカイン阻害因子 / 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター |
研究実績の概要 |
頭頸部癌の中でも甲状腺癌は生物学的悪性度の低い分化癌から極めて悪性度の高い未分化癌に移行することが知られている。これまで分化癌である甲状腺乳頭癌 と未分化癌との分子生物学的な比較検討がなされてきたが、未分化転化に至るメカニズムは未解明である。 昨年度までの研究では、分化癌として手術を施行した症例で、組織学的検査により未分化癌と判明した偶発型未分化癌の関連遺伝子およびSOCS3、STAT3、IL-6など JAK-STAT経路に関連する遺伝子のコードするタンパクについて免疫組織染色により検討を行った。その結果、すべての例でBRAFの発現が分化癌成分および未分化 癌成分の両者で見られたのに対してp53は未分化癌成分のみで発現が認められた。SOCS3などJAK-STAT経路に関連する遺伝子については、免疫組織染色により75% の甲状腺乳頭癌でSOCS3のタンパク発現が認められたが、未分化癌では発現が認められなかった。このことは、SOCS3の発現低下によって未分化癌への転化が引き 起こされているという仮説を支持している。 この仮説をもとに、甲状腺未分化癌の細胞株を用 いたin vitro実験を行ってきた。その結果、アデノウイルスベクターによるSOCS3導入により、細胞株におけるSOCS3蛋白の発現は亢進する一方で、甲状腺未分化癌細胞の増殖は抑制された。 今年度はSTAT3、IL-6などJAK-STAT経路に関連する遺伝子について検討している。今後は増殖抑制のメカニズムを解明するとともに、in vivo研究へつなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
基礎的研究および動物実験は神戸大学大学院医学研究科内の施設において行う予定であった。しかし、コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言および蔓延防止等措置により、現在の勤務先からの往来が難しい状況になった。また、令和3年11月に自身の体調不良および入院、手術があり計画通り研究を進めることが難しい状況になった。可能な範囲での組織検体による免疫染色を用いたサイトカイン阻害因子およびその関連タンパクの発現について研究を行った。 また、オンラインでの研究に関する情報収集やミーティングを行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長を申請し、承認されたため、研究を当初の計画に基づいて進めていく予定である。所属機関についても来年度から神戸大学の関連施設に異動するため研究は進めやすくなる。 しかし、今後も新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言の発令などが想定されるため、in vivo研究準備していく一方で、所属する研究施設で継続的に可能な解析方法を検討し、準備する。具体的には組織から採取した核酸物質を用いたゲノム解析などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令により、現在所属する大阪府内から兵庫県内の研究実施施設への往来が制限された。in vitro研究を終了させ、in vivo研究に入る予定にしていたが、in vitro研究が予定通り遂行できなかった。 また、学会発表も現地開催がほとんどなくリモートでの参加が多かったため交通費、宿泊費などが必要なく、予定額の使用ができなかった。 次年度使用予定額は計画されたin vitro研究における試薬および人件費、in vivo研究における実験動物購入、施設使用料や飼料代、研究成果の報告(学会発表や論文投稿)に使用する予定である。
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