研究実績の概要 |
カルシウム感知受容体(calcium sensing receptor, CaSR)の内耳における機能解析を目的とした研究であり、そのため、引き続き、遺伝子の機能解析にとって強力な手法であるノックアウトマウスの作成を試みた。CaSRのノックアウトによりカルシウムの代謝異常のため、体制致死になるという既報告に基づき、機能解析には副甲状腺ホルモンも同時にノックアウトするダブルノックアウトマウスを、Crisper技術を用いて作成を試みたが、ダブルノックアウトマウスの作成には困難があり、解析に利用可能なマウスは得られなかった。 我々のグループが発表した薬理学的な方法による機能低下についても検討を行っている。以前の報告では、ラット内耳にCaSRの拮抗薬を注入することで聴力への影響が観察された(Minakata T, Inagaki A et al., Front Mol Neurosci. 2019)。これは内リンパ液で低く抑えられるカルシウムイオンの濃度調節が聴力において強い影響を持つこと示すデータであるが、次の段階を見据え、本知見のさらなる臨床応用を目指して、鼓室内にCaSRの拮抗薬と同様にベンゼン環を有するステロイド剤(プレドニゾロン)投与し組織移行性を検討する臨床試験法に基づく臨床研究を立案し、実施した。タンデムマススペック法を用いた移行濃度の測定の予備実験では組織移行性について良好な結果を示唆する結果が得られ、現在結果の詳細な解析、統計処理を行っており、近日中に報告する予定である。
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