本研究では、前年度に引き続いて、体平衡偏倚の客観的評価を行うことを目的に、左右それぞれの足底にかかる荷重を実際に測定し,下肢荷重と身体偏倚の関係について調べ、下肢荷重が体平衡を定量化できる指標なるか検討した。前年度までの研究で、左右に姿勢をシフトさせた時の重心動揺を測定する検査(2方位重心動揺)を行い,患側に荷重をかけた側に動揺が優位にみられることがわかった。そこで、最終年度では、めまい疾患に対して左右それぞれの足底にかかる荷重を実際に測定し,下肢荷重と身体偏倚の関係について調査した。 (1)平均下肢荷重の左右差率を(優位側-非優位側)/優位側で算出し,末梢性めまい疾患〔持続性/反復性〕とその他のめまい疾患における左右差率を比較検討した。その結果、末梢性めまい疾患とその他のめまい疾患を比較すると,末梢性めまい疾患で左右差率の大きい症例が多くみられた。しかし,それぞれの疾患群の左右差率の値に有意差は認められなかった。一方,末梢性めまい疾患を,持続性のめまい疾患と,反復性めまい疾患に分けて検討すると,持続性めまい疾患で0.2以上,さらには0.3以上の左右差率の大きい症例が多くみられた。また,各疾患群の左右差率の平均値で比較すると,持続性のめまい疾患は他の2群と比べ有意に2倍近くの高値を示した)。このことから,下肢荷重を解析することにより,めまい疾患の機能障害の左右差を定量的に評価できる可能性が示唆される。 (2)左右の平均下肢荷重の優位側とロンベルグ/マン検査の偏倚側の一致性を調べた。その結果、ロンベルグ/マン検査で右か左への体偏倚を認めたものは56例にみられたが,そのうち身体の偏倚側と下肢荷重の優位側が一致した症例は41例の73.2%に認められた。このことから,下肢荷重を調べることにより,末梢性めまい疾患における患側を検出できる可能性が考えられる。
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