研究課題/領域番号 |
19K09901
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
後藤 穣 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80281426)
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研究分担者 |
神沼 修 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80342921)
北村 紀子 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80415603)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マスト細胞 / アレルゲン免疫療法 / 舌下免疫療法 |
研究実績の概要 |
本研究ではアレルゲン免疫療法後の有効/無効患者血清をディファレンシャルプロテオーム解析することにより、有効患者のみに誘導されるマスト細胞脱顆粒抑制物質の探索を実施する。見いだされた候補分子については、ヒトマスト細胞脱顆粒系およびマウスモデルを用い、in vitroおよびin vivoでその機能を検証する。さらにそのマスト細胞脱顆粒抑制物質が、有効患者のみでアレルゲン免疫療法によって誘導されるメカニズムを、タンパクおよび遺伝子の網羅的解析およびその量的相違の要因となる遺伝子多型とのゲノムワイドな相関関係を元に統合解析することによって、アレルゲン免疫療法の奏功機構を分子レベルで解明することが本研究の目的である。 その高い有効性に反し、約3割の患者には無効となるアレルゲン免疫療法の特徴を活用し、プラセボとの比較ではなく有効/無効患者の相違に着目したところに、本研究の高い学術的独自性がある。両者の相違を明確に示した先行研究成果によって、ディファレンシャル解析を行う上での最適なコントロールが確保できたため、本研究の実行可能性は高い。 本研究の成果は、アレルギー疾患治療に向けた複数の研究展開を創造する。まず、同定したマスト細胞脱顆粒抑制物質自身もしくはそれを標的とした低分子化合物を、これまでにない作用メカニズムのアレルギー疾患治療薬として開発する道が開ける。さらに申請者ら自身でも、アレルゲン免疫療法の効果を事前に判定する予測診断法の開発に向けた研究展開を将来展望する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臍帯血よりCD34陽性細胞を分離し、定法に従いstem cell factor、IL-6等と共に培養してヒト培養マスト細胞を得る。抗ダニ抗原IgEレベルの高い患者血清で感作後、ダニ抗原を添加して脱顆粒反応を誘導する。有効/無効患者の血清は、免疫グロブリンを含む主要蛋白を除去した後、抗原刺激を行う直前に添加する。hexosaminidase遊離反応を元にマスト細胞の脱顆粒を評価し、有効/無効患者血清の作用を患者毎に検討する。各患者における脱顆粒抑制効果の程度と、1で解析した有効性の間で相関解析を実施する。 スギ花粉抗原を用いた先行研究で得られた成果が、ダニ抗原製剤でも再現できるか確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
マスト細胞脱顆粒抑制物質の探索 高いマスト細胞脱顆粒抑制効果がみられた有効患者血清と抑制効果がみられなかった無効患者血清をプールし(各々5人分程度)、微量タンパクも検出できるようBio-rad社製ProteoMinerタンパク質濃縮キットで処理した後、iTRAQ解析を実施する。それにより、①有効患者における治療前後比較および②治療後における有効/無効患者比較の両者で相違を示したタンパクを同定する。
マスト細胞脱顆粒抑制物質の機能検証 候補分子またはその抗体を購入または大腸菌等を用いリコンビナント分子を得る。ヒト培養マスト細胞の抗原誘発脱顆粒反応に対する効果をin vitroで検討する。また、抽出した候補分子はヒト血清中に存在したことから、血中での安定性が期待される。そこで、マウスを用いたpassive cutaneous anaphylaxis(PCA)反応や、抗原誘発体温低下反応等に対するリコンビナント分子またはその抗体の効果をin vivoでも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マスト細胞の脱顆粒を評価し有効/無効患者血清の作用を患者毎に検討する計画だが、前年度参加した患者が予定よりやや少なかった。そのため次年度に必要な検体をさらに集め、前年度のデータと合わせて脱顆粒抑制効果の程度と有効性の間で相関解析を解析を実施する計画である。
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