研究課題
舌下免疫療法によるアレルギー性鼻炎・花粉症の治療は近年徐々に普及しており、特に小児期に早期治療介入しその後の他のアレルギー疾患への進展を予防できる可能性も期待されている。しかし明確な治療メカニズムは十分に解明されているとは言えず、治療効果の個人差を治療前に判断することも困難な状況である。我々は舌下免疫療法の効果発現メカニズムの一端にマスト細胞が関与していると仮定して研究を計画した。マスト細胞はⅠ型アレルギー反応の最初のスタートを引き起こす重要な細胞である。マスト細胞が活性化することによってヒスタミンを中心として化学伝達物質が放出され、種々の炎症反応が惹起され、即時相反応としてくしゃみや鼻漏が出現し、遅発相反応として重症な鼻詰まりがおこる。今回の研究では舌下免疫療法の効果の差によって、患者血清中にマスト細胞を脱顆粒させない仕組みがあることに着目した。舌下免疫療法開始前および2年間の継続治療後に患者採血を行なった。血液中の各種細胞分画の変化について確認するとともに、分離した血清を用いて、アレルギーに重要な役割を果たすIgEの値などを調べた。ヒトCD34陽性細胞からマスト細胞を作製し、IgEを一晩感作させた後、抗IgEを作用させて、hexosaminidase遊離反応での脱顆粒試験を行った。この際、免疫グロブリンを含む多量タンパクを取り除いた患者血清をあらかじめマスト細胞と共培養することで脱顆粒に与える影響を確認し、著効・無効血清での違いを比較検討した。患者血清中にはマスト細胞を活性化させない(脱顆粒させない)物質があり、その結果Ⅰ型アレルギー反応が抑制され、アレルギー性鼻炎・花粉症の症状を抑制することが可能になると考えられる。より早期に、より効果的に舌下免疫療法が患者の症状を緩和できるように、今後はこれらのマスト細胞活性化抑制因子の制御機構を解明していきたい。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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