研究課題/領域番号 |
19K09904
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
成田 憲彦 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (80345678)
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研究分担者 |
伊藤 有未 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (00646458)
高林 哲司 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (70397272)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / CD82 / 微小転移 / 血中循環腫瘍細胞 / シスプラチン耐性 / 放射線耐性 |
研究実績の概要 |
口腔癌細胞株T3M-1を三次元培養して得られるMulticellular tumor spheroid (MCTS)はMTTアッセイでシスプラチン、パクリタキセル、放射線に高い耐性を示した。この耐性能の可逆性を検証するためにT3M-1のMCTSからシングルセルを単離し、単層培養に戻した細胞株T3M-1SMO1およびT3M-1SMO2を樹立した。両細胞株で耐性能を解析したところ、 抗腫瘍薬 /放射線耐性が顕著に減弱することが解った。このことからMCTSの耐性能は可逆性であり、MCTSと同様にCTCクラスター・微小転移巣の抗腫瘍薬耐性も克服できる可能性が示唆された。PCRアレイでT3M-1単層培養、MCTS間での遺伝子発現の変化を解析したところ、CD82がMCTS 形成時に高発現していることを見出した。CD82 はEカドへリンとβカテニンの複合体を安定化させ、細胞間接着を亢進することが報告されている。すなわちMCTSの凝集密度に関連する。リアルタイムPCRでCD82 の発現がMCTSでは著明に増加し、T3M-1SMO1および2では発現が著明に低下していることを確認した。またCD82をRNAiで抑制するとMCTS形成が抑制され、さらに MCTSのシスプラチン・パクリタキセル耐性が有意に減弱することがMTTアッセイで明らかになった。我々はMCTSにおいてCD82が細胞間接着による内部低酸素を亢進し、EMTを誘導することでMCTSの多様な耐性能を獲得している可能性があると考えている。CD82の微小転移巣における耐性能誘導に関する機能解析のため CRISPERによりCD82ノックアウト頭頸部癌細胞株(CD82KO)を作製中である。CD82KOにおいてMCTS形成能、各種耐性能を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPER-Cas9によるCD82ノックアウト株作製に予定よりも時間がかかっている。ピューロマイシン耐性遺伝子は組み込めるが、予想以上にCD82の完全ノックアウトにならないことが解った。Cas9のオフターゲット効果が原因と考え、今後はCRISPER-ダブルニッカーゼによるKO株作製実験へ切り替える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度前半でCD82ノックアウト頭頸部癌細胞株(CD82KO)を完成させる。後半でCD82KOにおいてMCTS形成能、各種耐性能を解析する。また野生株とCD82KOのMCTSにおいてEMTマーカー(CD44, Snail, Twist, Nカドへリン、Eカドへリン)の発現をリアルタイムPCRで確認する。CD82KOではMET側に傾いている可能性があると考えており、CTCクラスター、微小転移の薬剤・放射線耐性の克服可能性を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はCOVID19の影響によりCRISPER-Cas9関係の試薬、ベクターが一時購入できなかった。このため当初の計画よりも購入費が少なかったため、次年度使用が生じた。令和3年度には再入荷が可能となるため購入費に使用する。
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