研究課題/領域番号 |
19K09918
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
小野 宗範 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (30422942)
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研究分担者 |
西村 幸司 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20405765)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下丘 / 興奮性ニューロン / 抑制性ニューロン / 内耳損傷 / 耳鳴 |
研究実績の概要 |
2019年度には内耳損傷による下丘興奮性/抑制性ニューロンの活動バランス改変に関する知見をまとめ論文発表した(Ma et al., Hearing Research, 2020).下丘内では正常動物では抑制性ニューロンが興奮性ニューロンよりも高い自発活動を示す。しかし、音響暴露による内耳損傷によって慢性的な聴力障害を起こし2か月後に活動測定を行った結果、正常な興奮-抑制活動バランスが改変され、異常な興奮性ニューロンの活動亢進が引き起こされていることが明らかとなった。またこの変化と関連して下丘ニューロンの活動電位形状が変化していることが見出された。これらの結果から、下丘内で内耳損傷によっておこる脳幹からの入力の減弱を補償する可塑的な変化が起こり、興奮―抑制ニューロンの活動バランスが改変されていることが示唆された。この下丘内での可塑的変化は、難聴によって生じる耳鳴に関連している可能性が極めて高い重要な所見であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のとおり極めて重要な所見を発見しそれを論文発表することができたことから、当初の計画以上に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下丘における興奮性/抑制性ニューロンの活動改変と耳鳴との間の関係を行動実験による耳鳴判定実験を加えることで明らかにしていく。また下丘での活動改変のメカニズムを電気生理学的手法と形態学的手法を用いて明らかにしていく。具体的には細胞内電位記録を行うことにより、どのような細胞膜の電気特性変化やシナプス入力変化が起こるのかを検証する。また、下丘細胞の内耳損傷に伴う形態変化を検証することにより、活動性に変化を起こす原因となると考えられるシナプス形成変化や細胞内でのイオンチャネル分布の変化などを検証する。加えて、内耳損傷後に人為的な聴神経刺激を行うことにより下丘での可塑的変化の抑制を図る。この実験は耳鳴の抑制にもつながる重要性を持つ。当初はウイルスベクターとDREADD手法による聴神経活動の亢進を考えていたが、遠赤外レーザーによる聴神経刺激法を優先的に行う。遠赤外レーザーによる聴神経刺激はげっ歯類を用いた実験で鼓膜外から非侵襲的に行うことができることが示されていることから、よりヒトへの応用に近い技法として積極的に検証していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延により本来あるはずだった学会への出張がなくなったことにより使用されなかった旅費を次年度使用額として計上した。当該助成金は今年度の研究により必要性が生じたレーザー機器の購入に使用することを計画している。
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