研究課題/領域番号 |
19K09919
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
萩森 伸一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90291799)
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研究分担者 |
仲野 春樹 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10444027)
乾 崇樹 大阪医科大学, 医学部, 講師 (60465614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顔面神経麻痺 / 後遺症 / リハビリテーション / 顔面神経核 / 三叉神経 |
研究実績の概要 |
Bell麻痺やHunt症候群を代表とする顔面神経麻痺は、本邦において毎年約40,000人に発症する。集学的治療にて75%、30,000人の麻痺は治癒するが、残りの25%、約10,000人は治癒に至らず、眼と口が連動する病的共同運動や顔面拘縮などの後遺症に生涯にわたって生活の質を著しく低下させる。後遺症の予防にはリハビリテーションとされるが、その基礎的研究はほぼ成されていないのが現状である。本研究では顔面神経麻痺の動物モデルを用い、表情筋マッサージによる三叉神経入力の顔面神経核や神経再生、後遺症抑制のメカニズムを明らかにし、得られたEBMに基づく最適な顔面神経麻痺に対する表情筋マッサージ法への応用を目指す。 2020年度は2019年度に引き続いてモルモット顔面神経麻痺モデルを作製した(顔面神経本幹のクリッピングあるいは切断後縫合による)。麻痺後一部のモルモットには30分の用手的な顔面マッサージを連日、継続的に行った。回復過程において電気刺激による三叉神経入力を行い、Blink reflexをビデオ撮影して病的共同運動出現を確認した。加えて顔面神経麻痺時の顔面神経核興奮を電気生理学的に観察する目的でBlink reflexの際のF波の測定を試みた。その後、中枢興奮性の評価目的でモルモットを断頭・脳組織を摘出し、顕微鏡下にモルモット橋部横断面で顔面神経核の位置を同定し、脳内の機能的活性を評価するマーカー(神経活動マーカー)であるc-fosの免疫染色を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モルモットの顔面神経麻痺モデルを確立し、さらに回復過程において病的共同運動が生じることが確認された。電気生理学的検討では信頼性のある結果は得られておらず、さらに改良の余地がある。 神経切断後に吻合を行ったモルモットの脳を用いてc-fos免疫染色を行った。顔面神経核に神経活動マーカーであるc-fosが陽性になる神経細胞があることを確認し、陽性細胞数の測定方法を確立した。しかし、予備実験として、同一のスライス上での術側と健側の顔面神経核においてc-fos陽性神経細胞数を比較したところ一定の傾向はみられず、切断面ごとによる差が大きいことが分かった。このため、顔面神経核全体の活動性・興奮性の評価方法として同一個体から複数のスライスの合計による評価が良いと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
c-fos免疫染色による顔面神経核の興奮性評価として、昨年の予備実験で得られた評価基準と方法で、既存のサンプルを用いてスライスの数を増やして再評価を行う。追加して、同条件で麻痺のないモルモットを作製し、コントロール群として同様の評価を行い、両群を比較する予定である。また、電気生理学的な評価法の改良も引き続き継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ蔓延につき学会出張が無く、旅費出費が無かった。次年度に開催される国内・国際学会に参加可能であれば、充当する予定である。
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