研究実績の概要 |
Bell麻痺やHunt症候群を代表とする顔面神経麻痺は、本邦において毎年約40,000人に発症する。ステロイドや抗ウイルス薬、手術など集学的治療にて75%、30,000人の麻痺は治癒するが、残りの25%、約10,000人は治癒に至らず、眼と口が連動する病的共同運動や顔面拘縮などの後遺症に生涯にわたって生活の質を著しく低下させる。後遺症の予防にはリハビリテーションとされるが、その基礎的研究はほぼ成されていないのが現状である。本研究では顔面神経麻痺の動物モデルを用い、表情筋マッサージによる三叉神経入力の顔面神経核や神経再生、後遺症抑制のメカニズムを明らかにし、得られたEBMに基づく最適な顔面神経麻痺に 対する表情筋マッサージ法への応用を目指している。 2022年度は病的共同運動観察用の神経刺激器を購入した。用手による顔面マッサージを施行したモルモット顔面神経麻痺モデル(顔面神経本幹のクリッピングあるいは切断後縫合による)の脳組織切片を作製し、顕微鏡下にモルモット橋部横断面で顔面神経核の位置を同定し、脳内の機能的活性を評価するマーカー(神経活動マーカー)であるc-fosの追加免疫染色を行った。同一のスライス上での術側と健側の顔面神経核においてc-fos陽性神経細胞数を比較したところ、それぞに陽性細胞はみられるものの、術側あるいは健側のどちらに多いという一定の傾向はみられず、むしろ切断面ごとによる差が大きいことが分かった。以上から顔面神経核の活動性・興奮性の評価には顔面神経核全体をくまなく含む複数のスライスを作成し、それぞれの切片におけるc-fos陽性細胞数を合算して評価する必要が考えられ、今後の研究に応用する予定である。
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