研究課題/領域番号 |
19K09922
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
堀江 沙和 川崎医科大学, 医学部, 助教 (40609666)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ノルアドレナリン / アセチルコリン / マウス / 嗅球 / 電子顕微鏡 / シナプス / 単一ニューロン標識 |
研究実績の概要 |
嗅覚情報を最初に処理する1次中枢である嗅球には、出力ニューロンの他に種々の介在ニューロンが存在し、情報処理に関与している。嗅球に入力するニューロンは、末梢から入力する嗅神経の他に脳の他の領域から遠心性のセロトニン、アセチルコリン(ACh)、ノルアドレナリン(NA)作動性線維が入力していることが知られている。本研究ではこれらの遠心性の入力のうち、NAおよびAChニューロンに注目し、嗅球内での局所神経回路を解明することを目的としている。 本年度は遠心性NA作動性ニューロンについての解析をまとめ、論文発表を行った。嗅球への投射経路に加え、嗅球に入る遠心性NA作動性線維と嗅球内の細胞との関係を見るために、各種ニューロンマーカーおよびNAの受容体の抗体を用いて免疫多重蛍光染色を行なった。さらに、NA作動性ニューロンが嗅球内でのはどの細胞とどの様なコンタクトがあるのかを調べるために、電子顕微鏡を用いた詳細な形態観察を行なった。NA作動性ニューロンの線維はvaricosity構造を持ち、シナプスを形成していた。シナプスは全てNA作動性線維のvaricosity部分で見られ、その頻度やシナプスを形成する相手が嗅球内の各層で異なる事が明らかとなった。最も多くみられた外網状層においても約17%と非常に少ないが、NA作動性線維が僧房細胞の樹状突起とシナプスを形成していることが連続切片法を用いた電子顕微鏡3次元立体再構築像より明らかとなった。嗅球内においてNA作動性線維のvaricosityの多くはシナプス小胞様の構造を持っているのにもかかわらずシナプスを形成していない事、また周囲に多くのNA受容体の発現が多数見られたことから、nonsynaptic contactとしてvolume transmissionの可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノルアドレナリンの解析に関して先行して行い、論文投稿をすることができた。アセチルコリンに関しては少し遅れてはいるが、今後、同様に電子顕微鏡解析を行える準備はできているので全体として、概ね研究計画通りに遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
アセチルコリンニューロンにおいて、主に電子顕微鏡を用いたシナプスレベルでの解析を進めていく。最終的には、嗅球の神経回路内においてのノルアドレナリン、アセチルコリンニューロンによる調節機構の形態学的知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文発表に伴い、海外の学会に参加予定で予算を計上していたが、新型コロナウイルスの流行により中止となり渡航費の使用がなかった。また、2020年12月より電子顕微鏡解析等を学ぶため英国に留学しているため、一部の物品の購入の予定を見合わせ、帰国後に購入する予定のため、次年度使用額が生じた。今後、解析を進めるために電子顕微鏡資料作製および神経細胞を可視化するのに必要な試薬等の消耗品などに使用する予定である。
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