研究実績の概要 |
嗅覚情報処理をする1次中枢である嗅球では、匂いの情報は嗅神経から糸球体において僧帽細胞へと情報が伝えられ、さらに高次中枢へと伝えられる。一方、嗅球へは脳の他の領域よりセロトニン(5HT)、アセチルコリン(Ach)、ノルアドレナリン(NA)などの遠心性の入力があることが知られている。近年、単一ニューロン標識により、5HT, Ach, NAニューロンの起始核から嗅球までの投射経路の詳細が明らかとなってきたが、投射先である嗅球内での詳細は不明であった。本研究では、これらの遠心性の入力のうちN AおよびAchニューロンに注目し、嗅球内での局所神経回路を解明することを目的としている。 研究期間を通して、NAニューロンのOB内での局在および電子顕微鏡を用いた詳細な形態解析を行った結果、N Aニューロンの線維は、非常に少ないがシナプスを形成していた。その頻度やシナプスを形成する相手が嗅球内の各層で異なる事が明らかとなった。さらに、嗅球内においてNA作動性線維のvaricosityの多くはシナプス小胞様の構造を持っているのにもかかわらずシナプスを形成していない事、また周囲に多くのNA受容体の発現が多数見られたことから、nonsynaptic contactとしてvolume transmissionの可能性も示唆された。これまでのノルアドレナリンニューロンの投射経路や嗅球内での走行、シナプスを含めた微細構造形態についてまとめ、論文発表をした。
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