研究実績の概要 |
我々は光干渉断層血管撮影(OCTA)の導入当初より、その解像度の高さから網膜細動脈周囲にcapillary-free zone(CFZ)があり、動脈を毛細血管前レベルまで同定が可能であることに報告していた(Mase, Ishibazawa, IOVS, 2016)。近年、OCTAのみでも動静脈を正確に判別できる可能性が世界的にも注目を集め始めていることに、我々もまず焦点を当てた。 そこで、上記の特徴を生かして、眼科医以外が判定しても、OCTAのみで健常人・糖尿病網膜症眼においても正確に動静脈を区別できることを本研究費のサポートを得て報告した(Ishibazawa, Waheed, TVST, 2019)。本研究では、動脈第二分枝のCFZに注目してトレースすることで、第三分枝まで約95%の確率で正解することができると分かった。一方で、動静脈交叉部の上下関係については、実際とは逆に描出されてるケースがあると世界で初めて報告し、「crossing artifact」と命名し、注意喚起した。 更に、マサチューセッツ工科大学と共同研究で、網膜血管疾患における網膜無灌流領域を自動で検出し、動脈と静脈のいずれに近接しているかを判定するソフトウェアを新たに開発した。これにより糖尿病網膜症の小さな網膜無灌流領域は動脈側優位に存在し、静脈側に向かって拡大する可能性を初めて報告した(Ishibazawa, Waheed, IOVS, 2019)。 これらの研究については、国内学会での一般演題のほか、国内研究会での多数のセミナー講演、総説の執筆(眼科, 2020, 3月号, OCT angiography アップデート)、2020年日本眼科学会においてもシンポジウムで講演し、その成果の啓蒙を行った。
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